疲れた ページ30
「………?」
___とても大切な何かを思い出したような気がして、ヒュッと息を呑んだ。
振り向いた先には何もない、綺麗な庭園が広がっている………これを、どこかで見た気がした。
「そういえば、なんで鬼ごっこをしようだなんて……?」
こんな何もかも不思議で分からない環境で、どこからそんなワードが出てきたのだろうと思う。
___やったことがあるんだ。かつて、ここで“誰か”と。
そう気付いて、私はもう一度振り向いて、後ろにいる皆を見た。
「どうかしましたか…?桜子さん、様子が…」
「……いや…何でも………ただ、ちょっと」
走馬灯……とは違うけど、それに似たような、過去の記憶が頭に浮かぶ。
“あの記憶”は、多分……記憶がない以前の、恐らく鬼殺隊だった頃の私の記憶だ。
そして、そこで会った無一郎や甘露寺さんは、きっと私のことを知っていた……それも裁判で会った最初から。
………この調子だと、もしかして柱全員が反応的に私と関わりがあったということになるけど。
嘘だろおい、と予期せず判明した無し寄りの有りの事実に、半ば放心しながら心の中で呟いた。
「疲れた」
ついに頭が痛くなってきてふらっと蹌踉めくと、目の前の5人が驚いたように目を見開く。
1、2歩後ろに蹌踉めいてから、こめかみを抑えて、私は全員に声を掛ける。
「体力…使いすぎたかもしれないから、寝る…」
力尽きるというか、頭がキャパオーバー。柱全員と関わりがある鬼?なんだそれ私か??
そう言って、糸の切れた人形の如く、ふらりと倒れる。
いや嘘でしょ寝るとは言ったけど、ここでじゃなくて部屋で寝たかったよ。
皆の前で疲れ過ぎて倒れた人……じゃなかった鬼じゃん、恥ずかしいやつじゃん。
「…………」
「お前ッ…」
思いきり宇髄さんの方に倒れていくのを感じながら___私は抵抗できずに、重くなる意識を投げ出した。
___目が覚めて、布団ではなく宇髄さんの腕の中にいたのには……流石にもう悲鳴を上げたが。
どうやら倒れてから目が覚めるまで数分としか経っていなかった……ようだ。
一瞬で誰だか分かった私が間抜け面でいたら、それに気付いた真上の宇髄さんと目が合った。
「………何事…?エ」
顔面がイケメン過ぎて、見ているだけで息の詰まる宇髄さんの綺麗な目を見上げ、小声で呟く。
……すると、突然宇髄さんがピタリと足を止め、無言かつ真顔で私を見下ろした。
何で立ち止まったんだろうこの人、と半ば泣きそうな気持ちで心中叫んだ。
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楓音(プロフ) - 作品とても楽しく読ませて頂いています!初の登場時からずっと気になっていたのですが、「炭治郎」を「炭次郎」と書き間違えていたのが気になってご報告させて頂きました💦ご不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません💦 (2022年3月22日 18時) (レス) @page6 id: 5a612b3e43 (このIDを非表示/違反報告)
むい推しの人 - 初コメです〜。一つ気になったことがありまして…。「連れていく」で登場した夢主ちゃんの服のことです。膝上の短い袴ってどんなやつですか?変に細かいところ気になってしまいました…すみません。長文コメ失礼しました! (2019年9月22日 14時) (レス) id: 00103e9837 (このIDを非表示/違反報告)
風雅(プロフ) - 初コメ失礼します。無惨の名を言うと殺されるという呪いは発動しないのですか?無惨に限って例外はないような気がするので。今後の展開が気になります!更新頑張ってください! (2019年9月3日 21時) (レス) id: 0b2ef933c6 (このIDを非表示/違反報告)
衣鶴奈(プロフ) - 14ページ目、悲鳴島ではなく悲鳴嶼だと思います.......物語は面白いので、更新頑張ってください! (2019年8月30日 2時) (レス) id: 8c5e0feeb8 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - オチを宇髄さんに一票! (2019年8月27日 18時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れんり@3回目 | 作成日時:2019年8月22日 20時