ご厚意 ページ11
「襲わない、って……そりゃ、動けないからね」
具体的には私の後ろの柱の気配で、体が動かないんだけど。
多分この居心地の悪さというか、気分の悪さは………………うん。
「君なら、縄くらいすぐ外せると思うけど…」
「はぁ?いや、無理……力が入らないし」
言われてみて腕を動かすが、ギチギチと音がするだけだ。全然外れないし、何ならビクともしない。
「というか、なんか…あなた美味しくなさそうだから、仮に食べろと言われても食べたくない」
肩が痛くなってきたから動くのを止めて、私はお館様を見つめてそう言うと、
「というか、おかしくない?私は貴方のことも鬼殺隊のことも知らないのに、ただの鬼とっ捕まえて、自分達の頭の前に置くとか……」
視線を左に向けて、今度は柱達へ目を向けて言う………が、やっぱり誰も返してくれない。
「…無視はちょっと悲しいんだけどな」
最初に柱を見た時も今も誰とも目を合わせないまま言うと、
「それで、君の処遇についての話し合いだったね、皆」
唐突に、ようやくお館様が本題を切り出してきた。
それに柱達が僅かにハッとしたような反応を見せて、私は内心首を傾げる。
「…………」
誰も何も言わないし、もう流れに身を任せよう。そうしよう………
そう思って、だんだん悪化していくような倦怠感と諸々の症状を和らげようともう一度横になって、目を瞑った。
「私は桜子が人を襲わないと信じて、桜子を鬼殺隊の一員に迎えようと思う」
と、お館様が言い出したのを、私は半ばそうくるよなぁ程度の気持ちで聞いた。
ここまで優遇されると、もうそれしか道がないのは何となく想像につく。
問題はどういう理由と経歴があればこうなるか、だけど………ほんとに分からないなぁ、こればかりは。
「反対意見は、あるかな」
あくまで穏やかな声で、お館様がそう付け足した。
今のも柱に向けたものだな、私が口出しする必要はない……けど、
「……そいつが本当に人を襲わないって、誰が保証出来るんだ」
目を閉じていてもわかる、誰かの押し殺したような声がした。
当然の反応で、少し悲しい反応だった……………音柱、宇髄天元からのその発言は。
その宇髄からの言葉に、お館様は何も言わない。だから、多分、
「誰も出来ないよ、君」
目を開けないまま、仰向けのまま、私はそう呟いた。
これは多分、私が自分で示さないといけないやつだ。自分の安全性というやつを……でも、
「君に否定されるのは、何だか少し……悲しいな…」
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楓音(プロフ) - 作品とても楽しく読ませて頂いています!初の登場時からずっと気になっていたのですが、「炭治郎」を「炭次郎」と書き間違えていたのが気になってご報告させて頂きました💦ご不快な思いをさせてしまったら申し訳ありません💦 (2022年3月22日 18時) (レス) @page6 id: 5a612b3e43 (このIDを非表示/違反報告)
むい推しの人 - 初コメです〜。一つ気になったことがありまして…。「連れていく」で登場した夢主ちゃんの服のことです。膝上の短い袴ってどんなやつですか?変に細かいところ気になってしまいました…すみません。長文コメ失礼しました! (2019年9月22日 14時) (レス) id: 00103e9837 (このIDを非表示/違反報告)
風雅(プロフ) - 初コメ失礼します。無惨の名を言うと殺されるという呪いは発動しないのですか?無惨に限って例外はないような気がするので。今後の展開が気になります!更新頑張ってください! (2019年9月3日 21時) (レス) id: 0b2ef933c6 (このIDを非表示/違反報告)
衣鶴奈(プロフ) - 14ページ目、悲鳴島ではなく悲鳴嶼だと思います.......物語は面白いので、更新頑張ってください! (2019年8月30日 2時) (レス) id: 8c5e0feeb8 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - オチを宇髄さんに一票! (2019年8月27日 18時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れんり@3回目 | 作成日時:2019年8月22日 20時