隔 離 病 棟 .

花吐き病 ページ3

『失礼します、具合はどうですか？』









504号室では4人の女性患者が生活をしている。
全員花吐き病を患った者だ。




ちなみに男性はその隣の505号室。
この病棟では性別によって部屋が分けられていることが多いのである。









花吐き病。
片想いを拗らせると口から花を吐き出すようになってしまう奇病。
　



吐く花は人によって違うらしく、また吐く花の花言葉も自らの恋に影響されているというから面白い。



当の本人からすれば何も面白くはないだろうし、むしろ忘れたい過去でもある。




看護師としての私ではない、素の私から言わせれみればとても美しい奇病だと思う。









「藤堂さん、いつもありがとうね」







そう丁寧にお礼を下さったこの方は さくらさん。
皮肉にも名前がさくらとは、なんとも言えない。






吐く花は白い薔薇で、花言葉は 【尊敬】だ。







高校時代に 2個上の先輩を好きになってしまったらしく、その人は偉く出来た人で 成績優秀、スポーツ万能、更に顔もイケメンだった、との事だ。









『昨日は夜、眠れましたか？ここ3日で吐くペースが頻繁になってきましたけど…』


「実は寝付けが悪くて…仰る通り、花の量も吐いてしまう回数も増えて 心身ともに苦しさを感じていました。」









辛いのは痛い程に分かる。
この病気は 両想いになる以外、治せる方法がまだ見つかっていない。





治療法がない中で こうやって患者さんの話を聞くのは少し厳しいものがある。ただのカウンセリングじゃあないか。








『さくらさんは、想い人の方とはもう会われないんですか？』




デリカシーの無いことを言った自覚はあるが、そこをクリアしないと 治るか治らないのかが決まらない。




「実は、5年前に結婚して2年前に離婚したらしいんです。もしかしたら私にも…！って思ったのですが、勇気がなくって。今も恋人はいないらしいので 会いたい気持ちはあるのですが、急すぎるかと……」


『いいじゃないですか！気分転換に！病院に申請して下さればいつでも』






思わず恋話をしていた高校時代を思い出して、テンションが上がるのと同時ににやけてしまった。







「でも、最近いつ花を吐くか分からないし…」








それもそうだ、中々 患者さん達が好きな人に会えない理由は ‘ 好きな人の前で花を吐くのが怖いから。 ’

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