7話 ページ8
『…とうとうきたか』
アスファルトを照りつける陽の下、まるで因縁の宿敵と対峙したかのようなセリフを吐く。
土曜、おつかい、近所のスーパーへ続く道の電柱前。聞いているのは蝉時雨だけだ。
《夏の清涼大会!今年も開催!》
デカデカと掲示されているのは、おなじみのポスター。毎年行われるこの夏祭りはかなり大規模で、どの年も必ず多くの人が押し寄せてくる。
地方の人もこぞってこちらに来るから、電車で何駅かかかる私の家近辺でもちらほらと歩いているカップルを見かけるほどだ。
止まっていた歩み再開し、できる限り日陰を通りながら例年の様子に思いを馳せる。
私はといえば、中学生の頃から、仲の良い友達と親睦を深めるため電車を乗り継ぎ遠征したものだが。
今年に限って、友達と行く約束はしていない。
何故か。遡ること、数日前。
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『えっ、皆デート!?』
「ごめんって〜!
Aは孤爪とおデート☆ するもんだとばっかり思ってて…」
確認もしなくてゴメン!と謝られる。
あぁ、それだったらしょうがないか。勘違いは誰だってあるし、先約を取り消させるのも忍びない。デートだというのなら尚更だ。
ここは友として、笑顔で見送…
『…いや、違うからね!!?研磨はただの幼なじみだって!!』
_危ない、流されるところだった!私と研磨が、一体いつどこでそんなよろしくない関係になったというのだ。
「あれ、この前から付き合ってるんじゃなかったっけ」
「あ〜私も聞いた聞いた」
『違うってホントに!! 聞いた聞いたじゃないよ!
え、誰!? そんなデマ流したの!!』
「それは誰にせよ、アンタが説得力高めてるのよ」
「そうそう! 孤爪のこと大体把握してるし、いっつも一緒にいるから、最早入籍したって噂も…」
『研磨まだ17!!!』
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あの時は本当に焦った。何が酷いって、皆一様に疑おうともしないところだ。
むしろただの友達と弁解した時の方が疑われるのは理不尽すぎでは??
その後、一応誤解は解けたのだが、やれ「折角だからデート誘ってこい」だの、やれ「噂を事実にしてこい」だのと言いたい放題。
が、そういった感情は無いにしろ、不本意にも私の予定は空いてしまったわけで。花火大会の夜を部屋の中独り夜な夜な勉強で明かすのは辛いわけで。
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ねぎ - Rioさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、励みになります〜!! (2022年9月27日 23時) (レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 今晩、凄く素敵な小説を見てびっくりしました!更新、楽しみにしてます!(/^_^) ( 初対面なのにゴメンナサイ!) (2022年9月24日 19時) (レス) @page16 id: 9824f121c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねぎ+ | 作成日時:2022年7月7日 21時