にかちゃんだよ〜とは言えない② (ページ14)

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君との始まり④ ページ14

sideみやだて

Aさんがマネージャーになりたての頃、翔太がちょっと怖がってるのにつけこんで、Aさんと話す機会を作ったことがあった。

その時は翔太の対応が面白くて割とズバッと言っちゃったんだけど、あの時のAさん、俺の中でドストライクだった。

カッコよく見えるんだけど優しさもあって、みたいな。それこそ、王妃ってそんなもんじゃないかな。……オレの想像上の、だけどね。

そんなイメージもしばらくしたら少し変わっていった。カッコよく見えていたのが徐々にふわっとした感じに変わっていき、優しさの面が強調されて。でもカッコよさがなくなったわけではなくて。

そのイメージが変わった要因はオレ……と翔太や阿部にあるかもしれない。というのも、いつの間にか阿部と一緒にゆり組推しを始めたから。

Aさんのゆり組推しがどこから始まったのかは知らないけれど、阿部と推し活を始めてからは、翔太が怖がることはなくなって。

とは言っても照れからかうまく喋れてないのが翔太の可愛いところ。オレも自分から話す方ではないけれど、Aさんには話しかけたくなっちゃうんだよね。

「すごく難しい顔してるね。」

「ああ、宮舘さん。どう書けばいいかなって悩んでるところで。」

「……これ、何？」

「GASってやつです。」

「……申し訳ないことにお役に立てそうにない。」

話しかけた結果、オレじゃなんにも役に立てないことが判明。文章の言い回しに悩んでるなら、なんて思ったけど、何かのプログラムの言い回し……書き方はさすがに分からない。

オレがただ話しかけただけなのに、心配してくださってありがとうございますって言ってくれて。さらに言えば、この悩んでる時間もなんだかんだ面白いんですよ、とのこと。

仕事を楽しんでできるってそう簡単にはできないはず。そんなAさん、なんだか輝いて見える。

「よし、こい……。きたー！」

「もしかしてできた？」

「はい！」

アイドル顔負けのキラキラした笑顔。まぶしいくらいだ。よし今日はここで終わりっとパソコンの電源を落とすAさん。

「宮舘さん、帰りましょ！」

「あ、はい。」

いつもはこんなテンションではないはずなんだけど、プログラムが完成したことが嬉しかったようだ。その顔を見てるとこっちまで何故か嬉しくなる。

……オレ、もしかしたら……。いや、口に出すのはよしておこう。深みにはまってしまう気がするから。