君の声から始まった① (ページ31)

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トリガー⑤ ページ31

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「ちょっと待ってー！」

弟をタクシーに乗せ、私も乗り込もうとした時。

カラオケ店の自動ドアが開き、阿部ちゃんがやって来た。手には阿部ちゃんのものらしきバッグ。

「一人だと大変かもしれないから、オレもついていっていい？」

「え、いいの？」

「大丈夫。カラオケも時間的に終わりだし。」

正直すごくありがたい。体格はさほど変わらないとはいえ、男一人を引きずるってなかなかできないから。

私は助手席に座り、阿部ちゃんには弟の横に座ってもらうことにした。頭をこてんと阿部ちゃんの肩に乗せる弟。う、うらやましい。

タクシーの車内では極力話さないようにということで、私はクイズアプリを開いてひたすらクイズを解いていた。

……すぐ後ろの席に阿部ちゃんがいるのでなんとなく落ち着かなかったけど。

そうこうしているうちに私と弟が住むマンションの前に到着。私はカードでお金を払い、阿部ちゃんにはまたも寝落ちした弟を運んでもらう。

代金払うよって言ってくれたけど、ご好意でついてきてもらってるのとんでもないと遠慮した。

……というか私がお礼すべきなんだよね。

勉強会の報酬はケーキ2切れって言ったのに3切れになってるし、なぜか私の好みドンピシャのもの買ってきてくれるし、何より今弟を運んでくれてるし。

おんぶされている弟とおんぶしている阿部ちゃん。私はとんでもないものを見ているな、そう思いながら玄関のカギを開けた。