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年が明けると
拍子抜けするほどあっさりとキムソクジンは独り立ちして
毎日の業務で顔を合わせるのは朝礼と、たまにデスク周りですれ違うくらいの頻度になった。
敬語をやめたい、だなんて言ったけど その後そうそう話すことすらなく過ぎ行く日々にいつの間にか警告音すら聞こえなくなっていっていた。
距離の詰め方が理解出来ない。警告音どころか不信感による苛立ちが募り、たまに見かけるキムソクジンをどこか恨めしい眼差しで見てしまう自分が浅ましかった。
そしてキムソクジンとの営業回りが終わりを迎えた後も、私個人に特段変わった事は起きず のらりくらりと日々を貪るように生きている事実もまた私を苛立たせる要因のようだった。
営業回りが落ち着いて、帰社してすぐコーヒーでも飲もう、と給湯室に向かう。
狭い給湯室の薄暗さが割と好きだった。
ドアを閉めると、他社員の喋り声やキーボードを叩く音が微かになるくらいの落ち着いた場所になるのが良かった。
コーヒーメーカーに自分のマグカップを置き、ボタンを押す。
しゅーしゅーと音を立てて湯気の立つ黒い液体がマグカップを満たすのをじっと見つめながら つきそうになるため息を堪えた。
何だか歳をとったな、と感じることが増えた。
出来上がったブラックのコーヒーを口に含もうとした時、がちゃりとドアが開いた。
｢あれ？A帰ってきてたんだ｣
キムソクジンだった。
マグカップの傾きを誤って口の周りに出来たてのコーヒーの水面が当たり、びくっと肩を揺らしてしまう。
｢お疲れ様｣
彼はそんな私を気にすることも無く自分のマグカップに手を掛けながらつまらなそうに言う。
｢あ‥‥お疲れ様｣
｢ねぇ｣
私が発する言葉など欲していないというように言葉を被せてくる。
｢何｣
｢いつも僕の事見てるけどさ｣
｢え‥‥｣
マグカップをコーヒーメーカーに設置してボタンを押してからこちらを向き、
にやりと嫌な笑みを浮かべる。
｢そんなに寂しかったの？｣
何を言っているんだ？この男は。
目の前で小さなキッチンの縁に片手をつき、少し体を傾けながら自信ありげに笑うこの男は‥‥。
｢そんなわけないでしょ｣
何とか絞り出した否定の言葉にキムソクジンは ふーんと頷きつつ出来上がりそうなコーヒーに目線を変え、
｢Aさんのそういう所、可愛いね｣
と言い
そのまま お疲れ様 ともう一度形ばかりの労いの言葉を残してコーヒー片手に給湯室から出て行った。
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K(プロフ) - sunnyさん» コメントありがとうございます！ジンくん目線！凄くいいですね。整理が着いたら書いてみたいと思います！本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2021年10月15日 20時) (
レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
sunny(プロフ) - すごいどストライクの作品で大好きです💜！この作品のジンくん目線？の内容もすごい気になります！これからも大変かと思いますがお話頑張ってください！！ (2021年10月15日 18時) (レス) @page37 id: 5ee4f4580f (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - びぃんさん» コメントありがとうございます！嬉しいお言葉を本当にありがとうございます。こんな最低の男にしてしまって申し訳ないですが気に入っていただけて良かったです！ (2021年10月11日 18時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
びぃん(プロフ) - いやめちゃくちゃ好きです何だこれは……すっごい昂りましたありがとうございます神様仏様K様…… (2021年10月11日 18時) (レス) @page37 id: 57661bab90 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ほまさん» コメントありがとうございます！激アツ、凄く嬉しいです！風景を思い描いていただけて良かったです。これからも少しずつですが書き進めていこうと思いますのでまたご覧頂ければ幸いです。 (2021年10月11日 0時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K | 作成日時：2021年10月2日 19時
