好きになっても良いですか？2（赤） (ページ33)

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とりあえず屋根のあるベンチへ走る

ベンチに荷物を置いてハンカチで顔を拭く

髪も服もくつもびちょびちょだ

こんな雨の中来てもらうのも申し訳ないし、あんまりこの姿見られたくないかも

あの感じだともう家を出てるとは思うけど、今からでも来なくていいって言おう

そう思って携帯を取り出した

LINEを開いたところで「A！」と遠くから名前を呼ばれて顔を上げた

私を見つけるとすぐに走ってきてくれる

傘はさしてるけど、家から走ってきてくれたのか足元がかなり濡れている

それに、マスクも帽子もなしで一切変装をしていない

『ごめん、逆に迷惑かけちゃって...

誰かに見られるといけないから、すぐ戻って？

これ渡したかっただけだから』

トートに入れてきたレバニラ炒めを渡そうと手を伸ばすと、そのまま引っ張られて抱きしめられた

『だ、大毅くん？』

「ごめん、もうちょいはよ気づいてれば車で迎えに行けたのに」

『私が勝手にした事だから...それより人に見られちゃうから離して？？

大毅くんが濡れちゃうし』

冷えた身体を抱きしめられて温もりが心地良いけど、大毅くんに風邪をひかすわけにもいかないし、何より撮られたりしたら大変だ

「とりあえず行こ」

差し出したトートと傘を左手に持って、右手で私の肩を引き寄せた

『私はこのまま帰るから』

「あかん、風邪ひく」

私の方に傘を傾けて、肩を抱いたまま歩き始める

ねぇ、と声をかけても聞いてもらえなくて、大人しく大毅くんの家へ向かって歩いた

玄関に入ると「ちょっと待ってて」と大毅くんが部屋に入っていく

バスタオルを持ってきてくれて、1枚は広げて肩からかけられる

もう一枚で頭を包まれて、そのままがしがしと拭かれる

『ね、自分でできるよ？？』

バスタオルをかけられ何にも見えない

急に手が止まり、やめてくれたと思ったら今度は抱きしめられた

『大毅くん？』

「Aの悲鳴が聴こえた時、めっちゃこわかった

何かあったらどうしようって」

強く抱きしめられてるのに、声は弱々しい

『あの...ごめんね？

急に降ってきたからびっくりしちゃって...』

中々離れてくれず、抱きしめられてるというより抱きついて離れない子どものよう

心配してくれたんだね...

私も手を回して、なだめるようにぽんっ、ぽんっと背中を叩いた