向こうの世界/ページ2/外川命 ページ2
マシィに連れられて行った先は、まるで童話にでも出てきそうな豪邸だった。
「どうぞ、真冬様。マスターがお待ちです」
「ちょ、ちょっと待て。ここは?マスターって誰のこと?」
「入って頂けたらわかりますわ。どうぞこちらへ」
「どうしてだ?入って俺にメリットがあんのか?」
少し攻撃的に睨んでやれば、マシィは涼しげな顔でサラリと言い放った。
「真冬様がこちらへ来てくださるかで宮原心菜様の運命が決まりますわ」
「こ、こな?心菜は……心菜は死んだはずだ!」
幼なじみの……いや、幼なじみ“だった”心菜。
彼女は2年前の8月19日に、交通事故で死んだ。
だから、俺の行動で心菜の運命が決まるなんて、そんなの信じられるわけないだろう。
「あなたの行動で、心菜様が生き返るか生き返らないか決まると言っているのです。放棄ということで処理していいのですか?」
心菜が……生き返る?
それは夢にまで見て望んだこと。
もう一度俺は写真の中じゃない心菜の笑顔が見たい。
「行くよ、行かないわけないだろ」
俺は大きなため息をついて、その豪邸の扉を開けた。
中は想像以上に豪華だった。
よく分からない絵が飾ってあったり、いかにも高そうな壺が置いてあったり。
マシィは俺を1番奥の部屋まで連れて行った。
「ここですわ。マスターが待っております」
マシィがその重々しい扉を押すと、ギギィ……とその見た目に合った音が響いた。
「初めまして」
中にいたのは、柔和そうな初老の男性。
銀のふちのメガネの奥の緑色をした目は嬉しそうに細くなっている。
「マシィ、外してくれ」
「了解しました」
その男性の命令でマシィは金髪を靡かせながら部屋を出た。
「マシィから聞いたかね。私はマスター。良ければマスターと呼んでくれるかな」
マシィもそうだったけど、ここの人達の言葉は日本語なようで日本語じゃない、いわば違和感のある言葉だ。
「よろしくお願いします」
ペコリと俺が頭を下げると、マスターは細い目を更に細くした。
「ところで本題に入るがね」
その言葉に俺はびくっと体を硬直させる。
「宮原心菜さんのことだ」
「生き返らせることが……できるんですか」
俺がたまらず訊くと、マスターはピクッと頬を引き攣らせた。
「うん?マシィに聞いたのか」
まさか、言っちゃダメな事だったのか?
「まあよしとしよう、そうだ。宮原さんを生き返らせることができる。だがね……代償が君の命なんだ」
俺の命と心菜の命を、どちらか選択しろって言っているのか?
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作者名:文芸部 x他6人 | 作成日時:2018年3月1日 20時