リライト 2 (ページ43)

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「うるさいなぁ！嫌なの！」

「は？」

「嬉しくないよ、そんな無理されても。」

「でもお前は、」

「でもじゃなくて！俺そんな鬼じゃないよ。死んどそうに隣で踊られても俺苦しいだけだって。仲間大事に出来ないでデビューなんて出来るわけないじゃん。」

北斗に返せたのは沈黙だったが、ユウは自分が仲間だと認められていたことに酸っぱさを感じていた。お荷物だと思っていたのだ。隣に立つのが自分でなければ北斗は順調にデビューへと駒を進めるだろうと。

そしてその2日後、ユウが練習に使っている小山に北斗が現れた。

「だと思ったんだよねー。」

「北斗！？」

「アイドルかっこいいって思っちゃった？」

してやったりな顔をした北斗がベンチへと座る。「考えること一緒だねぇ。」と青空を見上げた。

「ゲーセン近いのに濡れすぎだなって思ってさ。俺も裏の公園で練習してた。レッスン室使いにくいよね。」

「なんだよ、気づいてたんだ。」

「あなたのシンメだから。前から成長は感じてましたよ。」

へへっと笑った北斗が空いた左側を叩く。ユウはそこへ腰かけた。

「ありがとう。頑張ってくれて、」

前を見つめてそう静かに放った北斗の瞳が揺れている。それを見たユウが北斗の背中を強く撫でた。

「俺のためでもあんのよ、もう。だからそんなに慌てんな。」

ユウもまた北斗の気持ちに気づいていた。ユウが自分のために連れてこられたということを強く意識していると。ユウを自分の夢に巻き込んでおきながらデビューが決まらないことに焦っていると。

「俺は北斗がいれば大丈夫だから。」

「なに？それ。」

「求めてないってことだよ。俺の人生とか考えないでいいよ。北斗がいればダンスも歌も苦手だけど頑張れるんだよ。だから隣にいてよ。」

どんなに劣等感に苛まれても、不甲斐なさに心が病んでも北斗の健気な姿がユウを奮い立たせていた。巻き込まれたのは事実だが、それを悪いなんて思っていなかった。気負いなんて必要ない。ただ不器用な自分にその姿を見せてくれるだけで良い。

もし許してくれるなら、その隣に立たせてくれないか。

ユウにとって松村北斗という青年は、すでにアイドルだった。

「"一生一緒"だね、優吾。」

「重いよ、それ。」

「一緒に叶えよう。人生賭けた誓いだよ。」

北斗の言葉がユウの胸に溶け込んで静かに微笑む。

「あぁ、"一生一緒"。」

すれ違う2人が肩を並べた日だった。