リライト 2 (ページ37)

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自分に言い聞かせるように言ったナナセがサイドガラスに頭を預ける。窓の外を恋しそうに見つめた。

「これからもよろしくね。」

白い建物が見えて減速する。停車したシエンタから何も言わずにナナセが降りた。黒い門に向かっていくナナセを素っ気なく思った森本が窓を開ける。

「ナナセ！」

「何？」

「また明日！」

ナナセは犬歯を見せて笑って森本に手を振った。

「ありがとう！」

森本が生きたナナセを見たのはそれが最後であった。

会社に戻り京本と伊藤の会話を盗み聞いた森本は、永久雇用の話がナナセのことであると気づいた。

いつも以上に優吾のことを話していた理由も自分がいない世界を描いた理由も、明日を約束しなかった理由も、全てわかってしまった。

白い建物へと戻った森本は社員証を見せて中へと乗り込んだ。

C08がナナセの番号だ。

部屋のロックを解除する。

「っ、、ナナセ！」

森本の目に飛び込んだのは黒く汚れる部屋と黒く染まるナナセの姿であった。

「嘘だ、、ナナセ！」

悲鳴にも聞こえる叫びをあげてナナセへと駆け寄ろうとするも、1歩目が掬われる。ナナセの血液が流れてきていた。

見込みはない。

そうわかっても森本は踏み出してナナセを抱いた。

「何してんだよ、、ナナセ！ありがとうなんて許さない！ナナセが出るまで優吾さん見守るって仕事じゃん！

待ってんだよ、、ずっと、、。優吾さん、信じて待ってんだって、、、」

血液に混じって森本の涙が流れていく。耳元で聞こえるはずの森本の嗚咽にもナナセは何も反応しなかった。
　
自分はナナセのために何ができるのか。何か救ってあげることはできないか。

涙を拭いながら考える森本の目にナナセが握っているペンダントが入った。

これを優吾に届けよう。

咄嗟に出てきた案だった。

ナナセを待ち続ける優吾に何も残すことは出来ない。あまりにナナセが哀れだった。ならば大切にしていたこのペンダントだけでも、思い出のペンダントだけでも優吾の元へ届けなくてはならない。

森本はナナセの指を1本1本開いて首からペンダントを外した。自分のポケットへと滑り落とす。

警備員に知らせなくてはと立ち上がり部屋を出ようとしたが、躊躇ってナナセへと振り返った。

壁にもたれたナナセが眠っている。

自分への最後の言葉がありがとうなんて、、

「お疲れさま、ナナセ。」

込み上げる涙をグッとこらえて今度こそ警備員の元へと走った。