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No side
鼻の頭にボタボタと水が落ちて穴に入り込む。その痛みに目覚めたユウは身を捻って鼻をかんだ。ビシャビシャに濡れた顔を拭って髪をかきあげる。
気分の悪い朝を演出したのは伊藤であった。
「なんの用ですか。」
「森本からこの坂口に代わる、以上。」
「森本は?」
最低限の事を伝えてユウのことなど視界にも入れずに去った。ユウの質問に答えるつもりなんて更々なかったようだ。
スーツに黄緑のネクタイという平素なスタイルで男にしては小さめの坂口が部屋に残された。
眉を掻いてユウのペンダントを見つめている。ユウはそれを握って、いつでも逃げられるように体の位置を調節した。
「なんですか。」
「それのことですかね。」
「は?」
「いや、ナナセが言っていたんです。やっぱり返して欲しいなって最近思うって。」
「そんなはず、」
「本当ですよ?そう言ってたんです。」
グッと顔を近づけてそう言う坂口から思わず身を仰け反らせた。ペンダントを握ったままベッドを降りようと体を動かすと、坂口は行く手を塞いでユウをベッドに押し倒した。
「ひっ!」
「話を聞いて。」
「誰が聞くか!今さらなんだよ、、」
ユウが吸う呼吸に声が混ざる。唇は震え、坂口を睨む目の奥には恐怖が滲んでいる。一瞬でも逃げ出せる隙はないか。動線を確認するようにユウが入口を見る。
坂口はそれに気づいてユウの体にさらに体重をかけた。重さに苦悶の表情を浮かべる。
「信じてくれないのはわかってます!所詮伊藤が連れてきた男。あなたにとって敵以外の何者でもない!でも、、俺は自分の手で自由を手に入れたいんだ。あなたを騙すなんてしたくない!だからちゃんと聞け!
騙されてる。」
「、、誰にだよ。」
「この会社にだよ。」
「そんなわけ、、」
「ナナセは_____」
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作者名:久遠さん | 作成日時:2021年9月19日 0時