#41 ページ41
.
「そんな世間のことはどうでもいいの。俺とAの問題」
「き、気のせいです。ユンギさんの好きはそれは本当の好き、じゃないと思います」
前と同じようなことを言うAに俺は笑う。Aは何も分かってない。抱きしめていた腕を解きAをそっと押し倒した。そして目を見開くAの頬を包んで顔を近付ける。
「本当の好きって何?こんなにAのこと求めてるのに」
「でも…」
「でもじゃない。お願いだから俺から離れようとしないで。ただのユンギを見て知ってって言ったじゃん。有名人だとかそういうことをAは考えなくていい」
溢れてくる想いが止まらなくて次から次へと自分の想いを口にする。Aは耐え切れなくなったのかその綺麗な瞳から涙を溢れさせる。でも泣きたいのは俺の方だよ。
「Aがいないと俺は寝れないし安らげないの。Aの温もりに触れていたいし、抱きしめたいし、それ以上のこともしたい」
ずっとずっと想っていたことを真っ直ぐにぶつける。言っても伝わらないなら伝わるまで何度も言うしかない。
「一緒にピアノ弾いて歌って。そうやって一緒に過ごしたい。だからそんなどうでもいいことで俺を拒絶しないで。じゃないと俺もう生きていけないから」
「…わたしはただの平凡な人間なのに。親もいなくて行くところがなくてここに居させてもらってるちっぽけな人間なんです」
首を振りながら違う、駄目だと言うAの姿に苦しくなる。
「とてもじゃないけどユンギさんと釣り合うような人じゃないんです。抱きしめてあげたいなんて、そんなこと思える資格なんて…」
「ぜんぜん平凡な人間じゃないだろ。俺にとってはとっても温かい人で、安らぎを与えてくれるすごく大切な人。もうAは俺が生きていく上で必要不可欠な存在なんだよ」
「ユンギさん…」
「マジでもう拒絶すんな。お前を閉じ込めて自由を奪いそうになるから」
その綺麗な瞳に目線を合わせて訴えればAは一度ぎゅっと口を噤む。
「っ…わたしなんかでいいんですか。もし世間にわたしと会ってることが知れ渡ってしまったら」
「Aのことが知られたら自慢してやるよ。誰よりも温かみがあって安らぎを与えてくれる聖母みたいな女だってな」
「ユンギさんはわたしを買い被りすぎです」
「Aこそ自分を卑下しすぎ」
溢れる涙を止められなくなったAが愛しくてしょうがなくて。とうとう我慢できずにその唇に触れてしまった。
.
267人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時