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「ユンギ、さん…」
「久しぶりだな。体調は大丈夫か?」
久しぶりにAと会えたのに。いつものようにふんわりと笑って名前を呼んでくれなくて。顔色も悪いような気がしてそうやって聞けば煮え切れない返事が返ってきた。
Aに何かあったことは確かなのにその何かが分からなくて。しかもAはそれを悟らせないようにしていて。近くに居る筈なのになんだかAがとても遠くにいる気がして怖かった。このままAが離れていってしまうんじゃないかって思って、そのままAを抱きしめた。
「ゆ、ゆんぎさんここ外ですから」
「中に入ったらいいの?」
「そ、いうわけじゃなくて…」
恥ずかしがってるわけじゃなくて、それは拒絶だった。やんわりとしたものだったけど俺はそういうのに敏感で。でもなんでAが拒絶するのか分からなかった。今まで普通に受け入れてくれていたのに。
何だか分からないけど、そんな態度を取るAに腹が立って。強引にAと一緒に部屋に入ってもう一度抱きしめる。言葉では拒絶するが態度は違って。何なんだよって、Aの気持ちが分からなくて苛立つ。
「A?抱きしめられるの嫌だ?」
「嫌っていうわけじゃなくて…あんまりこういうことはしない方がいいと思います」
「何で?今まで受け入れてくれたじゃん。好きかどうかは別にして触れてもいいかって聞いたら、いいって言ったじゃん」
「そう、なんですけど…でも、そのやっぱり…」
「なに?」
はっきり言わないAに耐え切れず強い言葉で言えば俯いてしまって。あぁしまったって思う。でもどうすればいいのか自分でも分からなくて。抱きしめたまま責め立てるって俺自身も意味わかんないって思った。
「ごめん、責めるつもりはなかったんだけど。突然そういう態度を取られるの意味わかんないし。話してくれないと俺には分からない」
「…わたしの方こそごめんなさい」
そう言ってどうやって話そうか考えを巡らせている様子のA。黙ったままでいるのをいいことに、俺は抱きしめていた腕の力を込めて逃げないようにした。
久しぶりに感じるAの温もりに心が安らぐのを感じた。そしてやっぱり言葉では拒絶するけど抱きしめられるのが本当は嫌ではないことが分かる。だったら何で拒否するようなことを言うのか謎なんだけど。
「あの、ユンギさんとても有名な方みたいですし…あんまりこういうの良くないんじゃないかなって」
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涼音1006(プロフ) - 藍さまのお話を読むと、しっとりした空気を感じたり、優しいメロディーが聞こえてくるようでとても心地良いです。1日の終わりにベッドの上でゆっくりと読み返すのが楽しみです。これからも応援しております!お身体にきをつけて下さい(*^^*) (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
涼音1006(プロフ) - 藍さまはじめまして!「キミと奏でる〜」のキラピュアなユンギ氏と(←言い方)、「ひと夏〜」のチャラ甘で砂糖増量(←言い方!)なユンギ氏が最高すぎて、ここ数日で一気読みさせて頂きました♪続→→ (2021年6月3日 20時) (レス) id: 12686616a5 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 天然記念物さん» こちらこそ素敵なコメントありがとうございます。1番だなんて、そんな恐れ多いお言葉!嬉しい限りです。次回もキュンキュンできるような作品をお届けできるよう頑張ります。 (2018年8月20日 23時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
天然記念物(プロフ) - とても面白かったです。今まで読んだ中で私的に1番キュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございました。次回の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月20日 22時) (レス) id: 70eef4ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2018年8月12日 12時