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__何も、思い出せない。
ここが何処で自分が何者かすらも。

ただ一つ分かるのは、今自分は冷たい雪に積み重ねられた大量の屍の上で血塗れになりながら泣いていると言う事だけだった。






頭が呆然とする。
上手く思考が浮かばなくて足元もふらついてしまう。
額から顎にかけて汗のように流れるのは血で、屍から降りた私は白い雪に鮮やかな紅を落とした。

「う"…、ふ、…ふぅ、」

口から浅い息が漏れて、空気を曇らせる。
屍から数歩進み霞む視線を上げたところで私はやっとこの屍の正体が分かった。

青白い肌に異様に浮き出た血管。
今にも飛び出しそうなほどの眼球は見開いて血走っている。
断末魔の叫びが聞こえてきそうなほど大きく開かれた口には鋭い牙。
そしてそれらは、身体と切り離されて首だけになっていた。

「……おに、」

口から溢れたのはそんな言葉だった。
その時ふと、足元に硝子の破片が転がっている事に気付き恐る恐る近づく。
決して鮮明ではない硝子に映ったのは彼らとよく似た青白い顔をした___…

『A』

突如耳元で呟かれたように低い声が鼓膜を震わし、即座に振り返るが誰も居ない。
脳裏に砂嵐のような雑音が響き顔を歪める。

脳裏に走馬灯の様に映像が流れるが、モヤが掛かって何もわからない。



「私は、…」


そう言うと力尽きたようにその場に倒れてしまう。
身体全身が怠くて、どうにかしなくてはいけないのに
今は何だか、凄く眠かった。




___
__
_



「冨岡さん、此方の鬼は全て死んでいました。
 其方はいかがです?」



冨岡義勇と胡蝶しのぶは鬼と化した又造を斬った帰りの雪道で多量の鬼の屍を発見した。
大木の影となり完全には消滅しきってはいないが鬼達は生き絶えていた。

不思議な死に方をしている鬼達を観察しながらしのぶは冨岡に話しかける。
しかし無口の冨岡からは返事が中々返って来ず、しのぶは内心苛つきながらも、突っ立っている冨岡の元へと歩みをすすめた。


「冨岡さん、何か言ってくださらないと_って、
あら、其方のはまだ息をしていたんですね」

「……待て」


留めを刺そうとしのぶが刀を鞘から抜こうとした時、
今まで黙っていた冨岡が制する。
「…なんです?」しのぶは呆れながらも倒れている鬼を覗いて目を見開いた。


「少し様子がおかしい。」

「…ええ、」


2人には倒れていたのは鬼ではなく
何故かそれが人間に見えた。

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ふじか(プロフ) - 続きを楽しみにしています。 (2021年10月7日 14時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
Graecia devil sardine(プロフ) - 冨が富になってますよ! (2019年11月21日 17時) (レス) id: 890b359372 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年11月21日 1時

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