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店に到着して教えられた個室に向かえば、テヒョンが何とも言えない表情でAの頭を撫でていた。
テヒョンは何も言わないけど、あいつの想いなんてとっくに気付いていて。
そして本人に自覚があるかどうかは分からないけど、A自身もテヒョンの想いを受けて何かしらの感情が芽生えていると思っている。
過去のことがあるから背中を押すようなことはせず、変化がないならそのままでもいいだろうと思っていた。でもテヒョンの顔を見ているとそれも酷だったかなと思う。
「テヒョン…」
「ヒョン！早かったね」
小さく声をかければテヒョンは弾かれたように顔を上げて。でも俺が来たことに気付いても、Aから手を離すことはなかった。それを俺は見て見ぬフリをする。
「ごめん、俺どうすればいいのか分からなくて。寝てるヌナ連れてタクシー乗るのも危険かなって思って」
「そうだな…Aの車運転してきた。外に止めてあるから、運ぶぞ」
「あ、ヌナの車か…」
テヒョンと一緒になってAを支える。机を見れば、かなりの数のソジュの瓶が並んでいた。珍しく相当呑んだな。こんだけ飲めばAでも寝落ちするか。
そう言えば酔うと突然寝るタイプだったな。酔うことが殆どなくて忘れていたが、Aが酔った時の記憶を思い起こしてそんなことを思った。
「こいつ、チビの癖に重いな」
「えー？俺、1人でも抱えられるけど」
「じゃあテヒョンが運べ」
「いいよ」
身体が小さいと言っても、大人だ。それなりに体重がある。そんなAを運ぶのに腕がだるいと思って漏らせば、テヒョンがいとも簡単にAを抱き上げる。
顔もいいしそういう姿が様になるな、なんてどうでもいいことを思った。身軽になった俺は先に車まで行き、扉を開ける。
俺だったらもっと雑にAを座席に寝かせるんだろうけど、テヒョンは壊れ物を扱うように慎重にそっとAを座席に降ろす。そんな様子にも笑みが漏れる。
こいつは本当にどこまでもAのことを想ってるんだな、と。
「A…なんかあったのか？」
車を発進させて、隣に座るテヒョンにAのことを聞く。
「今日、バイヤーともめたんだって。解決はしたけど、飲みたい気分って言ってた。珍しく料理も沢山注文してがつがつ食べてたよ」
「あいつは飲む上によく食うからな。会計してくれたんだろ？Aの代わりに出すよ」
「いいよ。この前はヌナが払ってくれたから」
「そうか？」
「うん…」
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作者名：藍
| 作成日時：2018年11月15日 20時
