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大丈夫か、と思いながらも俺は出番があるからそのまま追いかけることはしなかった。下手に近付いて、また誰かに何か思われても嫌だし。
俺からも、ソニヌナからも離れていれば気持ちが落ち着くだろう。変に挙動不審になって他の人にまで怪しまれるのはやめて欲しい。
それからAヌナは徹底的に俺を避けた。メイク直しも絶対に俺のところには来なかったし、終わってからのメイク落としも近付くことはなかった。ソニヌナの腕もだいぶ動くから、問題はなかったし、今は俺も近付くつもりはなかったけれど。ここまで徹底的に避けられると、逆に邪魔したくなる。
片付けを終えて、そそくさと帰ろうとしているAヌナに気付き、俺もさりげなく控室を出た。何度も出演している番組主催のコンサートだから、設備は把握している。周りの目を避け、Aヌナにそっと近付く。
「声出すなよ」
後ろからそっと囁き、ヌナが声を上げる前に腕を掴み引く。そのまま振り返らずに、近くの空き部屋に押し込んだ。
「な、なに……」
連れてきたのが俺だと分かったのか、抵抗はなくなったが、それでも緊張で身体は固まったままだった。そんなことは気にせずに、壁に押し付けてわざとヌナが嫌がる目線を合わせる。
「ねぇ馬鹿なの?」
「え……?」
なにがなんだか分からないという顔をして俺を見てくる。それでもその瞳は戸惑いで揺れているし、相変わらず掴んだ腕には力がこもっている。本当にいつまで経っても俺に慣れないし、怯えているし、ムカつく。
「あんなことで動揺し過ぎ。何かありますって言ってるようなもんだろ」
「あんなことって……」
「ソニヌナは純粋に俺とお前が同じ匂いなんだって分かってすっきりしただけだっただろ」
俺の言葉に押し黙る。何か言いたそうな雰囲気ではあるが、それ以上は何も反論しなかった。まあ言いたいことはわかるけど。
「それからもあからさまに俺の事避けて。ばれたいの?」
「そんなわけない」
「だったらもっと普通にしてなよ。いちいち動揺して青ざめて」
瞳には涙が溜まっているけれど、ぐっと唇を噛んで押し殺しているのか、溢れることはなかった。そんな顔を見て、ああやっぱりいじめたくなるななんて関係ないことを思ってしまう。
「もともと俺とお前の関わりなんて殆どないんだから、そうそうバレることない」
「そんなこと……分からないじゃない」
涙声で訴えるヌナに我慢できなくなって、口を塞いでいた。
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藍(プロフ) - Agust dさん» あわわ!むしろお勉強のお邪魔をしていませんか?気分転換になったのならいいのですが。わたしはいつも素敵なお言葉に励まされております。本当にありがとうございます! (2019年12月3日 1時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
Agust d(プロフ) - 私現在、試験期間中なのですが疲れたときにちょうど更新通知が来ていて「藍さんッッ!!!!」ってなりました (2019年12月1日 12時) (レス) id: fea73733b9 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - exol0725puさん» ゆんぎさんはいつもさらっと核心ついたり、周りを冷静に見ているイメージなので…格好良くしてしまいがちです笑 コメントありがとうございました! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - babe305901さん» わーありがとうございます!嬉しいです。これからも素敵なジョングクをお届け出来るように頑張りますね。 (2019年12月1日 10時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
exol0725pu(プロフ) - ユンギさんめっちゃかっこいい( (2019年11月30日 11時) (レス) id: 0e1f656f1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2019年11月10日 9時