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行く先を委ねられて、どきどきしながら彼を連れて歩き始める。ソウルを発つ前に簡単に調べた知識しかないけれど、1人だしどうにかなるだろうと思っていた。それがまさか、彼を連れていくことになるなんて。
合ってるよね?と何度も確認しながら、恐る恐るバスの切符を買って、またこれでいいだよね?と不安になりながら目当てのバスに乗り込んだ。
「そんな構えなくても、ただのアジア人観光客にしか見えないから。他にもいっぱいいるだろ」
気を張っていることもばればれみたいで、わたしの肩を叩きながら笑う彼にどきりとする。確かに観光客だらけで、誰もわたしたちなんて気にしていないけれど。それでも怖いものは怖い。
「それともカップルっぽいことして現地に溶け込む?」
「へ?」
バスの外を指差していることに気付き、そちらを見れば、道端で大胆にキスしている男女がいて思わず目をそらす。西洋人が比較的そうだとは知っているけれど、やっぱり目の当たりにすると驚いてしまう。
「あれくらい吹っ切れてたら、逆に誰も気にしないんじゃない?」
そう言って腰に腕を回されて引き寄せられるから慌ててしまう。近付く顔に言葉にならない声を出して止めることしかできない。
ああもうやだ、なんて思ってぎゅっと目を瞑った。
「ふっ……期待した?」
暫くの沈黙の後、頭上で笑うのが分かって、そっと目を開ければ。楽しそうに笑う彼がいた。相変わらず腰に腕は回ったままだけれど、からかわれただけだったみたい。
恥ずかしさで赤くなるわたしを見て、また彼はけらけらと笑った。完全に遊ばれている。
まあでも、機嫌が悪いよりいいかな、と緊張が解けた頭でそんなことを思った。
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彼にどきどきさせられたり、遊ばれたりしていれば、あっという間に目的地に到着した。郊外と言えど、それなりに知られている所なので、同じように降りるような人はいた。それでも街中と比べれば人は少なかった。
歩いて行けば、すぐに緑が広がってきて森の入口が見えてきた。
「へぇ〜こんなところあるんだ。いいとこ知ってんじゃん」
街中から離れているからそれなりにバスに乗らないといけない。でも離れている分観光客もそこまで多くはなかった。
街の中心からそこまで離れているわけではない、ちょうどいい距離感。でも目前に広がるのは少し色味を付けてきた木々達。悠然と広がる自然に、今までの慌ただしさを忘れて癒されたかった。
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藍(プロフ) - Agust dさん» あわわ!むしろお勉強のお邪魔をしていませんか?気分転換になったのならいいのですが。わたしはいつも素敵なお言葉に励まされております。本当にありがとうございます! (2019年12月3日 1時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
Agust d(プロフ) - 私現在、試験期間中なのですが疲れたときにちょうど更新通知が来ていて「藍さんッッ!!!!」ってなりました (2019年12月1日 12時) (レス) id: fea73733b9 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - exol0725puさん» ゆんぎさんはいつもさらっと核心ついたり、周りを冷静に見ているイメージなので…格好良くしてしまいがちです笑 コメントありがとうございました! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - babe305901さん» わーありがとうございます!嬉しいです。これからも素敵なジョングクをお届け出来るように頑張りますね。 (2019年12月1日 10時) (レス) id: 7c0b28e720 (このIDを非表示/違反報告)
exol0725pu(プロフ) - ユンギさんめっちゃかっこいい( (2019年11月30日 11時) (レス) id: 0e1f656f1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2019年11月10日 9時