すきなものの食べかた:26 ページ26
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もう誰にも話さずに、
ひとり抱え込んでるのも苦しいから
侑に話してみたものの、これを聞いて
後々冷やかされたらどうしようかなどと
一瞬後悔したが、意外と話は真剣に聞いてくれた。
『 …どう思う? 』
「 どう思うも何も、単純やろ 」
お前アホか?とでもいうような
訝しげな顔でそう言われるもんだから、
つられて自分も眉をひそめる。
「 そりゃお前のこと好きっていう話やないん? 」
好き、
それは小さい子でもわかるような言葉で、
確かに単純ではあるけれど、今の私には、
到底信じられないような言葉だった。
『 …いや、でも、』
「 考えてみ、まあ あいつ、腹立つ時もあるけど、
なんとも思ってない女子にそんなんすると思うか?知らんけど 」
本当はわかっている、侑の言う通り、
治がなんとも思ってない相手に、軽々しく
そんなことをするような人じゃないってことは。
「 あいつ、お前に優しくするやろ 」
『 …うん、でも、治は本当に優しいだろうから、
私だけにってわけじゃないやろ 』
「 教科書貸したりすんのはまだしも、わざわざ雨降る中 傘入れて家まで送ったり? 他に大勢男おるのに暗いから自分が送る、って言ったり?皆にすることっていうんか 」
そこまで言われて、返す言葉がなくなってしまった
思い返せば、治は私にたくさんしてくれた。
治は優しいと思っていたけど、他の女の子にも
こんな風にしていると考えたら、あまり気持ち良くはなかった。
「 忘れたか、俺が前に言うたやろ、
治がお前のこと可愛いって言っとった、って 」
今の今まで、忘れていた
半分、冗談だと思ったのと、
半分、それが本当なら嬉しい、
侑からその話を聞かされたとき、
私はそんな気持ちだった。
もし、治が私のことを好きで、
私のことをかわいいと言っていたのが本当ならば、
キスをした理由ともなんとなく辻褄が合ってくる。
私は楽しかったんだ
治が普通に優しくしてくれたことが、
治とする、他愛ない会話が。
侑から話を聞いたときに、
治のことを意識しまくってドキドキしていたのに、
気づけばそんなことはなくなっていって。
治といれば、なんだか落ち着つくから。
「 でも俺、お前とは友だちでおりたい 」
頭のどこかで、なつかしい声と、
私の胸を抉ったあの言葉が響いて、
あのときの嫌な記憶が鮮明に蘇った。
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うに - すすす素敵すぎてびっくりしました!最後までキュンキュンしながら読みました! (2021年8月5日 15時) (レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです!本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します!!終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です!宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした!これからも頑張ってください! (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜!!そういっていただけてとても嬉しいです;;;; (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈕 | 作成日時:2018年2月3日 17時