影と月 (ページ48)

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あまりにもじっと見つめるから、不思議に思い

彼に問いかけた。

「…どうしたの？

どこ見てるの？」

「いや…。

…聞くけど、その俳優くんとは

ホンマに何もないんやな？」

すぐに目を逸らしたと思いきや

またその話。

「ないよ。

なる気もない。

…それしか言えない、けど」

名前をつけるほどの関係ではない。

それを彼が納得してくれるのかは別問題になりそうだけど。

「ま…そこまで言うならええけど、さ」

その台詞とは逆に曇っていく彼の表情。

なんなんだろう。

「それ以外で何もない？」

「え？」

それ以外？

なんのことだろう、なんて

意味が分からず、頭の上にハテナを浮かべていれば

彼はまた眉をひそめてから

手で顔を覆う。

「タカシのこと、どう思ってる？」

「…タカシ？」

手で顔を覆ったまま

変なことを聞く。

その質問の魂胆が分からないまま

正直に、「大切な仲間で、親友」であることを言う。

きっとこれからも変わることのない、関係性。

彼だっていくらヤキモチを焼いたとしても

理解してくれていると思っていた。

「タカシも、そう思ってくれてんなら、ええけどな」

「なにそれ？」

少し、イラっときた。

そうじゃなきゃ、なんだというの。

棘のように感じる彼の言葉。

その後の言葉を待ってみるけど

彼は私を見つめ直し、

肩をそっと押した。

「皆が帰ったからって、」

「黙って？」

静かにベッドの上になれば

私のTシャツの首元を少しだけ下げて

優しく、そこにひとつ、キスをした。

彼の一瞬の柔らかさが私の肌を滑る。

「晃一、ちょっと」

突然のそれに驚いて声をあげる。

彼はすぐに顔を離して

まん丸の瞳に私を映す。

「酒は、もう飲むな。

あと、タカシの家に行くな。

……お願いやから、頼む」

どことなく、彼の瞳が潤んでいるのは

気のせいだと思っていいのか。

哀しみに染まっていると

思わなくても、いいのか。