影と月 (ページ47)

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「Aだけやぞ～」

そう言ってパチパチと照明をいじっていたのは、コーイチ。

彼は荷物を床に置いて私を怠そうに見つめていた。

「皆帰ったの？」

「もうとっくに。

まったくこれやから現代っ子は～」

くせのある関西弁が耳をつんざく。

たまたま私の近くにベッドが片付けられていたため

彼はベッドが壊れるんじゃないかと思うくらい

反動をつけて勢い良く座った。

あいにく壊れはしなかったけど。

返信もそこそこに

彼の隣に座ってみる。

彼は来たか、というように少し横にずれた。

それでも距離は近くて

お互いの肩が簡単に触れていた。

「何してん」

画面を覗いてこようとする晃一を避ける。

その先にはあの彼とのトークが映し出されていたからだ。

「誰やねん」

彼はあくまで笑顔で聞いてくる。

「ドラマで一緒だった人」

「俳優さん？」

「そんなとこ」

それから返事はないものの

なんとなく拗ねていることは伝わってきた。

「大丈夫だよ、

そういう目で見てないから」

「あんな～」

大きいため息をついてから

彼は私の顔を覗きこむ。

「Aが良くても、

どーにもならんこともあるやん」

「今、そんな感じ」

「は？」

「でも大丈夫だよ！

タカシが釘刺してくれたから」

「は。タカシが？？なんでタカシ」

彼の眉がどんどん歪んでく。

別にそんな顔をさせたくて言っているわけじゃない。

「昨日、ドラマの打ち上げがあって」

酔ってしまったこと

それであの彼に絡まれたこと

だけどタカシが間に入って帰してくれたこと

タカシの家に泊まったことを伝えた。

「よかったな、タカシがいて」

なんだかその口調もいやらしい、というか。

そういえばこの人、タカシにさえヤキモチを焼く人だったと

今さら思い出した。

「本当にそう思ってる？」

「多少はな」

そう言う彼の目線は私の首元。