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『そんなんずるいやんか!』
慌てて追いかけてきた大倉さんは私の前に割り込むと、私の頬に手を添えた。
「い…今お皿持ってますから危ないです…」
『我儘な主人も愛するのが使用人の仕事やで…?』
両手でお皿を持っていて抵抗できない私に、怪しく微笑みかけた大倉さんは顔を近づけると唇を重ねた。
頬にあった手は後頭部にまわり、反対の手が肩に置かれる。角度を変えて何度も降り注ぐ口付けに吐息を漏らすと、大倉さんは厨房の扉を開けた。
中に入ると、お皿を私の手から台に置いて、台に私を乗せるとまた唇が重なる。
「ちょ…大倉さん皆さんが…」
『見せつけたればええやんか』
夕食を作る音が聞こえる中、私はしばらく大倉さんの口付けに応じていた。
『夕食前のデザートご馳走様…使用人はもうお腹いっぱいみたいやね〜』
「お…大倉さんのせいですよ!」
『我儘主人の世話を辞めようとした罰やから』
大倉さんは私の右手に輝く指輪に唇を落とすと私を抱き上げた。
『夕食は他の奴らに任せて使用人はのんびりしようね〜』
「あ…ちょっと大倉さん!?」
厨房の外に出されると夕食のためにやって来た横山さんと視線が重なってしまった。
「あ…」
『水』
「はい…」
横山さんのコップに水を注いでいると厨房から大きな声が聞こえてきた。
「何…」
『ええから座れ』
戻ろうとした私の腕は掴まれ、そのまま席に座らされてしまった。
『大倉にキスされたやろ』
「え…?」
『顔…赤いで?』
私はすぐに横山さんから視線を逸らすと今度は清々しい顔をした大倉さんと視線が重なってしまう。
『あー!横山くんに乗り換え早ない?』
『大倉のものちゃうからな』
『言うねぇ…』
私はそれから夕食ができるまで大きな2人に挟まれ続けた。
“
『あ、コックの皆さ〜ん。料理長は今日でクビになったから。泣きながら土下座してきたけど…顔見るだけでも腹立つから無理って言うといたわ。
俺の女を自分と同じとかきっしょいこと言うからやで?
自業自得やわ…笑皆も……こうならんよう気いつけや』
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作者名:夜 | 作成日時:2021年11月10日 20時