愛されメイドの備忘録 (ページ35)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:19,089 hit

特別な女・緑ページ35

「夕飯の支度しないと…」

時刻は夕方過ぎ。私は慌てて厨房の扉を開けるととても美味しそうな匂いが既に広がっていた。

調理する音がする方に近づいていくと見慣れた後ろ姿。

「お…大倉さん！？」

『うわっ…って使用人か…』

「使用人かじゃないんです！こんな所で何してるんですか…！」

『何って料理やん』

「いや…」

手慣れた様子でフライパンを振る大倉さんに目が奪われる。

『ちょ誰にも言わんとってな。使用人以外の奴らにバレるとめっちゃ怒られんねん…とくにあの太いコック』

「彼がコック長ですから…それに主人がこんな場所に入ることが許されてません」

『あれ？使用人も僕の敵なん？』

フライパンからお皿に盛り付ける大倉さんは首を傾げて私を見下げた。口角を上げて何も言えない私を馬鹿にしたように微笑む。

『ほら、これ使用人の夜ご飯やから』

お皿を私の前に差し出すとフライパンなどを洗い始めた。

「え…？私はこんな豪華なもの…」

『ええから。俺の愛情いっぱい詰まってんねんで？食べへんなんて…言わんよな？』

すると、奥の扉が開き大倉さんが苦手なコック長が入ってきた。

〔な…また大倉さんこんな場所で何してるんですか！しかも…こんな豪華な料理まで作って…〕

『別にええやんか。足りひんかったらまた買ったるからさ…使用人の為のご飯やから許して？』

〔使用人って…彼女のご飯ならこちらでちゃんと…〕

『作ってあげてんの？俺らが食べ終わった後に使用人が1人で夜ご飯作ってんの知ってんで？』

大倉さんはお皿を持つと私の肩を掴んで厨房から出て行こうとする。

〔我々は彼女と同じ使用人です。同じ身分の人にこんな豪華な料理を…〕

『こいつはただの使用人やない。"俺ら"の使用人や…お前らと一緒やと思うなよ』

冷たく鋭い視線を残した大倉さんに連れられ厨房を出ると、いつも大倉さんが座っている席に座らされた。