愛されメイドの備忘録 (ページ33)

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「仮病…だったんですね？」

『ん〜…俺の絵の為にも許してや？』

「酷いですよ。本当に心配したんですから…っ…！」

『……』

安田さんに向かって強く言い放つと安田さんは黙ったまま筆を握りしめると、私の顔をじっと見つめてくる。

『その顔…怒っとる？』

「お…怒ってますよ！だって部屋に来たら安田さんが……」

話し始めると安田さんは持っていた絵の具を床に落とすと、さっきまで持っていたスケッチブックを手に取り私に近づいてきた。

『怒ってる顔も…可愛ええなぁ』

「か…からかわないでください！なんで仮病なんてするんですか！」

『怒ると眉毛上がるんやね…顔もほのかに赤い…堪らん…』

「何言ってるんですか…」

『凄いよ…今日で2つも絵の構成が浮かんだ。これでようやく完成できるんや…！』

嬉しそうに笑みを浮かべた安田さんは私の腕を掴むとベットに座らせ、私の顔を見つめたまま鉛筆を走らせた。

『もっと早くメイドが僕を見つけてたら…この前の品評会に間に合ったんやけどな…』

「私もう仕事戻りますから…！」

立ち上がり部屋から出ようとすると、安田さんは私の身体に置いてあった絵の具を洗うバケツの水を勢い良くかけた。

「な…何するんですか！」

髪の毛から全身びしょ濡れになってしまった私は安田さんに怒ろうとすれば、安田さんはにこやかに微笑んでいるだけだった。

『水かけられてどう？』

「どうって…」

自分の姿に私は怒りを静めると深呼吸して安田さんに微笑みかけた。

「子供の頃に戻ったみたいですね」

『え…？』

「私が風邪ひいてしまうので着替えてきます」

『なんで…怒らへんの？俺今…』

「着替えればいいだけですから」

『分からへん…』

戸惑い手からスケッチブックと鉛筆を落とした安田さんは首を横に振る。

それと同時にドアがノックされゆっくりと扉が開いた。