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「丸山くんさ…私の前で無理に笑おうとしてる時無い?」
『えぇ?あらへんよ。僕はメイドちゃんと笑い合ってる時が…』
「嫌だな。私は」
立ち止まって困惑する丸山くんを見上げると、曲がっていたネクタイを直してあげた。
「寂しくさせてごめんなさい。最近丸山くんとちゃんと向き合えてないなって思ってたし…」
『やめてや!』
「丸山くん…?」
『なんで謝るん?僕がメイドちゃんに悪いことさせたみたいやんか…』
「そんなこと…」
『僕は寂しくなんかあらへんから。気いつかわんといてや』
丸山くんは私の手を強く握るとそのまま手を引いて歩き出した。
「別に私は気を使ってるわけじゃ…」
『分かってんねん!俺はメイドちゃんに迷惑ばっかりかけとることも…面倒な奴だと思われとることも。やから…少しでもメイドちゃんに僕と居ると楽しいなって思って欲しいねん…』
視線を合わせず前を向いたまま述べた丸山くんは、私の手をゆっくりと離した。
『あの後ろ姿は誰でしょう?』
「え…えっと…大倉さん?」
『せいかーい!』
屋敷の近くまで来ると、丸山くんは私服姿の大倉さんの背中に向かって走り出した。
『痛ぁ!なんやねん丸!』
『あ〜!コンビニの新作スイーツやんかぁ!』
『離れろや…っ…使用人?丸、仕事場に連れてったん?!』
『まぁね〜』
丸山くんの後を追うと振り向いた大倉さんと視線が合った。
『でも仕事場に連れて行くと、皆惚れてまうからやめた方がええよ』
『当たり前やろ』
大倉さんから離れた丸山くんは笑みを浮かべると私の頭を撫でて屋敷の中へと入って行ってしまった。
『なんかあったやろ丸と』
「やっぱり私…丸山くんに沢山我慢させてるって思ってしまって」
『その優しさが1番丸にとっては辛いんちゃう?』
「え?」
『丸は優しいし使用人のこと大切にしとるけど、自分の全部をさらけ出すと使用人に嫌われるかもしれへんって思っとる。やからさ…全部丸らしいなって思ってあげて』
大倉さんは私を引き寄せ屋敷の中に入れると玄関で頭を抱え込む丸山くんが座っていた。
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作者名:夜 | 作成日時:2021年11月10日 20時