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明け方。
私はいつも通り珈琲と新聞を持って村上さんの部屋に向かった。
コンコン
「失礼します。村上さんおはようございます」
鏡の前で身支度をする村上さんに挨拶すると私はテーブルの上に新聞を置いて、珈琲を注いでいく。
『おはようさん』
対応も変わらずで村上さんは腰掛けると新聞を手に取った。
「今夜は夕食までに帰られますか?」
『せやな。頼むわ』
「かしこまりました」
珈琲を差し出すと村上さんは新聞から私に視線を向けた。
『昨日は悪かった』
「え…あ…気にしないでください!私の方こそ…申し訳ありませんでした」
『お前さんはなんも悪ないやろ。俺らしくなかったわ…反省しとる。あと、横山との事は誰にも言わへんから』
「はい…」
珈琲を口に運ぶと村上さんはいつものように笑みを浮かべる。
『ん…美味いわ』
「ありがとうございます…!」
村上さんと気まづくならなくて良かったと思い、私は村上さんに笑みを返した。
「あ、ゴミ回収させて頂きますね」
ベットの隣にあるゴミ箱の袋を取り上げようとすれば、くしゃくしゃに丸められて捨てられている複数の写真が気になった。
新聞を読む村上さんに隠れて写真を広げると、それは私と横山さんがホテルに入り、出て来る写真だった。その中にはBARで口付けを交わした時の写真まであった。
『使用人は主に嘘を付いてはならない』
「あっ…!?」
頭上から聞こえてきた声に私は思わず写真を手から落としてしまった。
『折角丸めて捨てたんやから広げんでや』
「あの…本当に…すみませんでした…」
『やから…お前さんはなんも悪ないやろって』
村上さんはしゃがんで写真を1つ1つ丸めて捨てると、私の頭に紫色の宝石が怪しく輝く右手を乗せた。
『BARなんかよりもっとお洒落で夜景の綺麗な所連れてったるからな』
「え…」
『俺に…嘘は通用せんよ。覚えとき?A』
少し崩れた笑みを浮かべた村上さんは静かに言うと、私から手を離しソファで新聞の続きを読み始めた。
「し…失礼しました…」
村上さんの部屋を後にすると私の中で疑問がいくつも浮かぶ。あの写真は誰が撮ったのか。なんで会話の内容まで知っているのか。
私はまだ主の皆さんの事をちゃんと理解出来ていないのかもしれない。
”
『怖がらせてもうたな…次からは切って捨てな…あかんな』
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作者名:夜 | 作成日時:2021年11月10日 20時