愛されメイドの備忘録 (ページ12)

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パーカー洗いに向かう途中、曲がり角で誰かと思いっきりぶつかってしまった。

しかし、後ろに倒れた身体はしっかりとした腕に抱きとめられた。

『使用人…大丈夫か？』

「お…大倉さん！すみません…急いでて……」

私はすぐに離れるとパーカーを後ろに隠した。

『それ…ヤスのやんな？』

「あ…えっと…これは…」

『俺のは？』

大倉さんはゆっくり近づいてくると簡単に後ろに隠していたパーカーが奪われてしまった。

『絵の具…ヤスにやられたんやろ』

「すぐに洗えば落ちますから…！」

取り返そうと伸ばした手は宙を切り、私の身体は持ち上げられた。

『取り敢えず着替えに行くで』

大倉さんは私を片手で持つと私の部屋へと向かった。部屋の中に入るとクローゼットの前で降ろされる。

『ヤスのパーカー貸して』

「はい…」

私は大倉さんに手渡すとメイド服に着替える。
私のベッドに腰掛けていた大倉さんは自分のパーカーを見つめていた。

『ごめんな』

「え…？」

『ヤスに何された？あいつ…よからぬ事をしかねないやろ？』

「何も無かったですよ…？」

私はクローゼットを閉めて大倉さんのパーカーに手を伸ばせば手を優しく握られた。

『嘘。ヤスが何もしないわけがあらへん。ましてや着替えさせとるんやから…嫉妬でなんかされたやろ』

大倉さんは手を引くと私の腕や首を確認し始めた。

「本当に何も…っ…」

『見つけた』

私の左耳に触れれば嘘をついた私を大倉さんは鋭く睨みつけてた。

『何これ？噛み跡やけど…ヤスじゃないなら誰？』

「いや…ごめんなさい…」

『使用人ごときが主人に嘘なんてつくんやな』

私を突き放すと自分のパーカーを私に向かって投げつけた。