例えば、俺みたいな小学生がいるとして。２ (ページ7)

今日:24 hit、昨日:10 hit、合計:171,617 hit

５１ページ7

｢ぅん･･･？｣
｢目が覚めましたか？｣

丁寧な口調だったが、聞こえたのは透くんの声ではなかった

｢すば、るくん･･･？｣
｢そうです｣
｢･･･どこ？｣

声は聞こえるけど、昴くんの姿が見えない

｢すみません。死角でしたか｣

そんな声が聞こえて、視界の隅から昴くんが出て来る。やっと昴くんの姿が確認出来て、少しホッとする

｢ここは？｣
｢病院です。額からと右目付近からの出血で倒れたそうで、右目は視力が恐らく低下するようです｣

昴くんの淡々とした口調、というより少し怒ったような口調だった

｢私がたまたま通り掛かったから良かったものの、一体何事ですか？｣
｢友達と喧嘩して絶交した｣
｢また石を投げられたんですか？｣
｢俺の方が大きいから｣

相手は小さいし、俺の方が大きくて圧倒的に有利だから、そんな事になっても仕方ないとは思っていた

｢貴方は優し過ぎますね｣
｢そうかな？それにいじめられる理由が俺にあったなら仕方ない｣
｢それはあり得ません。仮にいじめられる理由があったとしても、いじめても良い理由にはなりませんよ｣

昴くんは俺の見える位置にイスを移動させて座りながら言った

｢リンゴ、食べますか？｣
｢食べる｣

そう言って、体を起こそうとすれば、昴くんが手伝ってくれる。ゆっくり体を起こして、自分の右目に触れる。右目には包帯があって、左目だけでは視野が狭く、視界が悪い

｢どうぞ｣
｢うさぎさんだ｣

昴くんからリンゴの乗ったお皿を受け取り、乗っているリンゴを見るとリンゴの皮がうさぎさんの耳になっていた

｢練習したんです｣
｢そうなんだ。可愛い。食べるけど｣

フォークでリンゴを刺して、口の中に放り込んだ

｢おいひぃ｣
｢食べてから、喋ってください｣

モグモグしながら感想を言うと怒られてしまったので、噛んでいるリンゴを飲み込んだ

｢美味しい｣
｢それは良かった。そう言えば、ご両親も心配していましたよ｣
｢え、来てたの？｣
｢はい。Aくんが目覚める少し前まで｣

昴くんの話によれば、俺が目覚める少し前までいたけれど、途中で用事を思い出したとかで病室を出て行ってしまったみたいだ

｢嫌な予感がする｣
｢それはAくん自身にですか？｣
｢･･･いや、友達にだよ。俺はいつまで病院にいれば良い？｣

訊くと、二、三日は様子を見て、悪化をするようであれば、引き続き入院する事になるが、何も無ければ退院し、通院という形になるらしい

入院や通院は良いのだが、それ以上に嫌な事は残っていた