例えば、俺みたいな小学生がいるとして。２ (ページ33)

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｢ハロぉ｣

風呂場を慌てて出て、部屋の隅でハロを抱えて情けない声を出した

｢友達って、キ、キスするもん･･･？｣

ハロに問い掛けてみたけれど、首を傾げられた

｢･･･し、しないよなぁ｣

ドラマとか漫画とかの知識だが、キスは恋人同士でしたり、好きな者同士がする行為だ。見てるだけで恥ずかしい気分になる

それを俺は透くんにされた

｢うぅぅ･･･｣

意味が分からなかった

何で、透くんがそんな事を俺にしたのかも、するのかも分からなかった。俺は男だし、恋人同士でも無い

じゃあ、俺への嫌がらせ？

そんな事を考えたが、透くんがそんな事をするはずが無い。透くんは優しい人なんだから。きっと何か理由があって、あんな事をしたんだ

｢Aくん｣

静かな声が俺の事を呼んだ

顔を上げて、声のした方を見ると透くんが立っていた

｢透くん･･･｣
｢驚かせましたよね｣
｢･･･うん。何で、キスしたのか訊いても良い？｣

訊くと透くんは少しの間、口を閉ざしたが、話してくれた

透くんが俺の事をそういう目で見ていて、そういう感情を持っている事を話してくれたのだが、正直、俺には全く分からない話だった

俺のどこが良いのかサッパリだし、透くんみたいに強くなくて弱いし、人を好きになる基準が分からなくて、人に迷惑しか掛けないような子供で、何なら小学生だ

｢ちょっと、俺には分からない、かな･･･｣
｢だと思います｣
｢この間、大好きって言ってくれたのも、やっぱりそういう？｣
｢そうです。僕を突き放してくれても、構いません。ですが、ちゃんと返事は欲しいです｣

胸元を握り締めて言った透くんは、ひどく真剣な表情で、断れるような雰囲気でも無かった。それにこれを断るような勇気は俺には無かった

｢･･･また今度でも良い？今、頭がごちゃごちゃしてて、訳分かんなくて･･･｣
｢勿論です。ありがとうございます｣
｢ううん。俺もありがと。言いにくい事、言ってくれて。ちゃんと返事出来るように沢山考えるから、待ってて｣

適当な答えを出してはいけないと思ったから、透くんにそう伝えた

｢ずっと待ってます｣
｢うん｣
｢･･･今日はもう寝ましょうか。僕はその辺りで寝るので、Aくんは、｣
｢一緒に寝よ。一人じゃ寒いよ｣

そう言うと透くんは少し目を見開いたが、すぐに笑って頷いてくれた。濡れたままの俺の髪を丁寧に乾かしてくれた透くんと共にお布団の中に入った

｢Aくん。寒くないですか？｣
｢暖かい。おやすみ｣
｢おやすみなさい｣

優しい声で透くんは返してくれた