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「そう。あの子が・・・」
「年下の子なんだけど、お姉さんみたいに優しいんだ」


少し考え込むように俺から視線を外した母さんに言った


「今度、話してみようかしらね」
「それも良いかも。そう言えば、母さんは透くんの事については何か知ってる?」
「安室くんは暫くは忙しいみたい。だから喫茶店に行ってもいないわよ」


喫茶店にいないという事は、探偵業の方で忙しいのかな。忙しくて、寝ていないのかもしれないな、なんて考えた。喫茶店の仕事を休むぐらいだから、相当なものだろう


「透くんは寝てる?」
「・・・寝てないかも」
「ええ!!?母さん、透くんの事知ってるなら言っておいてよ!!」
「そ、そうね・・・」


自分の事より、透くんが倒れないかが心配だった。病室にちょっとだけ顔を見せてくれた透くんは俺が見ても分かるほどに疲れていた


「お、お父さんに言っておくわ」
「何で父さん?」
「色々あるのよ」
「そっか。透くんに会うなら言っといて、また病室まで会いに来てって」


暫くは退院出来ないという話なので、母さんに頼んでおいた


「安室くんに休日でも作らせるから、その日に会いに行くよう伝えておくから大人しく寝てなさいよ」
「分かった。楽しみにしてる!!」
「それじゃあ、お母さんは帰るから、また来るわね」


母さんは帰って行き、一人、病室に残された。皆が帰ってしまい、寂しくなった病室。する事も出来る事も無く、横になっても窓から見える空を眺めた


『もう警察官にはなれない』


自分で言った言葉なのに、酷く心をえぐった

哀ちゃんに慰めてもらったけど、その事実を呑み込むには、少し足りなかったようで、たった一人の病室で嗚咽になって小さく響いた

憧れていた。夢だった。なりたかった。頑張ろうって思っていた

その矢先の事で、胸は酷く痛んで、溢れ落ちて行く涙は枕を濡らして、情けないなって思うけど、止められなかった。そもそも涙を止めるような手は無い


「・・・だれ?」


病室の扉が開く音が聞こえて、扉の方を見ずに訊いた


「俺だ。赤井だ」
「秀一・・・?」
「そうだ。今日はお礼を言いに来ただけだから、そのままで構わない」


顔を向けたくない事を察してくれたのか、秀一はそう言った


「お礼って?」
「あの子を助けてくれてだ。茶髪の少女、灰原さんだったかな」
「当然の事だよ。俺が守らないと誰が守るのさ」


あの時、あの場所には俺しかいなかった


「それに哀ちゃんが危険な目に遭ったのは俺のせいだから」


だから、この怪我も罰なのかもしれない

そんな風に思い始めていた

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作者名:空白可能 | 作成日時:2019年10月14日 20時

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