風見さんの新しい部下【男主】 (ページ28)

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｢覚えているが･･･｣
｢その彼女はとある事故に巻き込まれたんです｣

その事故は、大物政治家が彼女をひき逃げしたのだが、書類送検だけで済まされたというものだ

｢政治家や位の高い国民は法では裁かれない。それが嫌で俺は警察になったんですよ。絶対的な悪を裁く為に｣
｢まさか、お前･･･｣
｢勘違いしないでください？法律で裁くんですよ。絶対に言い逃れ出来ないように証拠を沢山見付けてね｣

俺がなんだか悪者にされそうだったので、慌てて風見さんに言っておいた

｢薫衣は悪をとことん憎んでいるんだな｣
｢ええ、まぁ。大嫌いですよ、犯罪者なんて｣

反省も無ければ、物や人のせいにする人間、自分が捕まらないと踏んで滅茶苦茶な事をする奴等も大嫌いだ。それが、自分の地位を守る為になんて聞けば、もっと嫌いだ

そう、大嫌いだ

｢･･･風見さんにお願いがあります｣
｢お願い？｣
｢はい。俺が服務の宣誓に背いて、犯罪者に成り下がった時は迷わずに俺を捕まえてください｣
｢分かっている。犯罪者は捕まえる｣

風見さんは俺から目を逸らす事も無く、一瞬の躊躇いも無く、返事してくれた

｢それを聞けて安心しました｣
｢だが、あまり考えたくないな。薫衣が敵に回るような事は｣
｢俺もずっと風見さんの部下でいたいですよ。俺が犯罪者以外に銃を向けるのはどうしようもない時だけです｣

そのどうしようもない時は必ず来る

だからこそ、こんな風に風見さんに頼んでいるんだろうとは思う。自分から誰かを信じる事なんて、あまりしないが、風見さんと降谷さんなら信じられるだろう

｢薫衣｣
｢なんでしょう？｣
｢また頼まれてくれないか？｣

あれから数日、非番の日に風見さんに呼び出しを食らって、会いに行くとまた頼み事をされた。また降谷さんに資料を届けてくれというもの

風見さんのお願いなので、それ引き受けた

引き受けて、車をいつもの少し遠くに止めて、アパートに向かう最中に集中豪雨に見舞われた。資料は濡れないように、服の中に入れたが、どうなったかは分からない

｢引き受けなきゃ良かったぁ･･･｣

びしょびしょに濡れた服を払いながら一人言を溢した。文句を言っていても、意味がないので、降谷さんのいる部屋に向かった

インターホンを押して、少し待った。その間に何度もくしゃみが出る

｢薫衣!!?びしょ濡れじゃないか!!｣
｢風見さんからの資料です･･･｣

鼻水が出て来るのを我慢して、降谷さんに風見さんから渡された資料を差し出した