プロローグ ページ2
🍸️ 🍸️ 🍸️
「A、別れよう」
青天の霹靂、急転直下。まさにそんな言葉がお似合いの突然の彼からの一言。天気予報では30％の予報だった雨が降ったのも、そのせい？会社帰りの夕方。私は傘を忘れ、予備の傘を会社に置いていたセンラくんに入れてもらって相合傘に浮かれていたのはほんの数秒前。結婚しようとプロポーズされて、それぞれの親に挨拶に行こうって言ってたのに。ウエディングドレス選びを始めていたのに。ザーザーと降りしきる雨も、家路を急ぐ行き交う人々も、目の前の彼も。全てが現状を飲み込めない私なんて気にせず置き去りにしていく。
「私の何が悪かったの？お願い、教えて！直すから、もう１回チャンスを頂戴･･･！」
「Aは何も悪くない、俺にはもったいない彼女やった。全面的に悪いのは俺なんよ、この傘は返さんで良いから。Aだけは幸せになって。きっとAなら俺より良い男すぐに見つけられるから。じゃあ」
待って･･･！伸ばした腕はごった返した街のせいで彼の背中に触れることさえ阻まれた。センラくんが良かったのに、センラくんじゃないと嫌だったのに。立ち尽くす私を邪魔だと言わんばかりに通行人は睨んで速足で去っていく。こんな惨めな気持ちのまま家に帰れるはずがない。嫌なことを忘れられる場所なんてあったかな――あ･･･。
「バー『Clown Rose』･･･」
私の呟きは雨音にかき消され、誰も気に留めない。センラくんと付き合うまでよく行っていた、大学生時代からの行きつけのお店。彼は酒好きのはずなのに、このバーを勧めても一度も一緒に行くことに了承してくれなかった。久しぶりにあの人に会いたい。私はスーツが濡れることなんて気にせず、家路から遠ざかった。
「いらっしゃいませ･･･久しぶりやな。そこのカウンター席どうぞ」
「半年ぶり、かな？お店、全然変わってないね」
席を指定した彼はバーテンダーの月崎志麻くん。私はマスターからも信用を置かれ、お客さんからも人気の彼の、お気に入り。この店に顔を出したのは私が先だから、彼のことは見習い時代から知っている。お店に来る度彼と話して、今ではお互い敬語が抜ける程の仲にまで打ち解けていた。
「突然来たってことは、なんかあった？」
「別に、彼氏にフラれただけ。それより志麻くんのオリジナルカクテル作ってよ。久々に飲みたいの、志麻くんの作るカクテルが」
このカミングアウトが、後の人生を狂わすなんて知らずに――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛月花(プロフ) - るいさん» いえいえ！新作の方もお読み頂きありがとうございます！去年の歌枠のベノムでのお遊びから生まれた物が好評で嬉しいです！ (2023年1月6日 20時) (
レス) @page35 id: 90a8141772 (このIDを非表示/違反報告)
るい - 凛月花さん» 嬉しき…ありがとうございます☺️やはり聖書進呈っておっしゃっていましたよね！わーい。あと、新作（しょまさん）神ですか？最推しなのでホント嬉しいです。これからも応援してます。 (2023年1月6日 18時) (レス) id: 4c026d6bdc (このIDを非表示/違反報告)
凛月花(プロフ) - るいさん» 当該コメント、こちらの方で削除させて頂きました、そして『出来合いワンナイト･ラブマスター』の称号をるいさんに贈呈します！元々聖書進呈とか訳分からないこと言ってた作者なので、称号名まで考えて下さりありがとうございます！ (2023年1月6日 16時) (レス) id: 90a8141772 (このIDを非表示/違反報告)
るい - 凛月花さん» そして数メートル飛び上がってしまうほどの我が儘かもしれないのですが、［ 出来合いワンナイト・ラブ］マスターの称号を私(るい)に与えてくださいませんか🥺。長文失礼しました。 (2023年1月6日 16時) (レス) id: 76430fb8d2 (このIDを非表示/違反報告)
るい - 凛月花さん» やったー！クイズに関して、一つお願いがあります。私の回答を削除していただく事は可能でしょうか。他の方も楽しんでいただきたいので。ですが、この作品は凛月花様のものであり、権利も全て凛月花様のものなので、判断は全て凛月花様にお任せします。 (2023年1月6日 16時) (レス) id: 76430fb8d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
