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「リスクを犯す必要は無いぜ、先生。もう殺しはしないと決めたが、仲間の命が懸かっているなら話は別だ」
そう言いながらチームのトレードマークのカモフラジャケットを脱いだユキは、背中に刺していたグルカナイフを取り出した
かつて彼が多くの人を殺めてきた殺戮のための刃。
「…みんな下がってろ。俺が道を切り開く」
ジャケットを窓から放り投げて、そちらに注意が向かった隙に飛び出していく
その動きは現役時代と何も変わらない
変わったのは、その刃を振るう理由だけ。
「……ユキのカッコつけ」
ナイフでグレネード弾をいなしているユキの背中に吐き捨てる
現役のユキなら装填の遅いグレネード弾相手ならすぐに殺れるはず。
やはり現役から力は落ちている
本来ならあんな力今すぐにでも捨てたいけれど、それに頼るしか道はない。
「ロッソ、パルテ。クロードのことよろしく」
敵の視線は完全にユキに集中している。
今なら、殺れる。
窓から飛び出して、敵の後ろに着地する。
ジャケットに縫い付けてあるダガーを取って、握る。
殺し屋時代の感覚と、組織に埋め込まれた軍事用身体強化デバイス。
スキル封じの煙幕の中でも変わらない、私たちに染み付いた狂気。
こちらに駆けてくるユキと目線を合わせてタイミングを測る。
残り15m。
４つのグレネードが一斉にユキへと発射された
「ほ！」
それを跳躍して避けたユキが敵に肉薄し、一閃。
それと同時に心臓めがけてダガーを一突き。
「っ、硬い！？」
それでも力を込めて振り抜くと敵の力は抜けたが、人間を殺めた感覚がない。
慌ててユキの方を見ると、刎ねた首がアスファルトに乾いた音を鳴らして転がっているだけだった。
出血も、フルフェイスの中身も無い。
…コイツら、人間じゃないの？
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作者名：まめもやし | 作成日時：2023年8月12日 10時
