Coin ページ32
「チーっす、Aさん元気ー?」
「……その呼び方やめてくれる?」
手元の書類を握り締めたAが深々と溜息を吐けばくしゃりと嫌な音。ただでさえ事務処理は苦手なのだ。集中力を削がれる軽い声の持ち主にAは眉を顰める。
「何の用事、ヒロト君?」
「そんな怖い顔しないで下さいよ〜。折角の美人が勿体ない」
「君、今日は何処担当? 呼び込みじゃなかったの?」
ヘラヘラとVIPルームに入った前原はそれがさぁ、とテーブルに手を着く。Aの表情は抜け落ちてくばかりだが、さして動じない前原はそのまま半身を乗り出す。
「ちょっと変な子引っ掛けちゃって」
「また? 自分で何とかしなさい」
「いや最初は俺も努力したよ? でも食い下がって来ちゃって。オマケに二十歳超えてるって」
一応二十歳を越えてれば入店拒否はまず有り得ないのがカジノビーナス。それでも前原が渋るとは一体。
彼の連れて来る客はどうにも面倒臭いのが多い。この間は「ヒロト君を誑かさないで!」なんて言う為だけにVIPルームに来た客もいる位だ。勿論、それくらいで動じるAではないけれど。
前原に一任して、後々迷惑被るのは恐らく自分だと判断したAは、プリントの束を引き出しの中にバサバサと押し込める。
台に置いていたハットを被り直し、コートは羽織ったまま椅子を立った。
「……そのお客様今はどこ?」
「んー、警備の誰かが対応してると思うけど、」
えっ、Aさん出てくれるの!? と目を輝かせた前原に、Aは再び溜め息をついた。
「ヒロト君、君はやっぱり中に居なさい。それと、名前を気安く呼ばないの」
「あ、じゃあじゃあ、ミス・アーシャは?」
「支配人と呼びなさい!」
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camellia(プロフ) - 葵さん» うぐふっ(謎の声)…………有難いお誘い誠に心苦しいけど今回は見送らせていただきます……バチクソに私事なんだけど50作目にこっち名義で新作出せるように諸々準備中なので、現時点で出来かねるのよ……一連が落ち着いたら参加も考えます(震) (2020年11月12日 22時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - camelliaさん» やった〜〜。頑張った甲斐がある(まだ始まったばかり)。一人完成したら公開って形で順番に書かせて頂く予定なので、遅くなるかもしれませんが……! 何に渋ってるかわかんないけど決心付いたらお気軽にお声がけ下さいね笑 (2020年11月12日 22時) (レス) id: f205b8954e (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - 好きです(唐突な告白) いや企画の時点でも相当好きでしたけど!!一気読みして心撃ち抜かれました本当に……。募集企画に興味湧いてきたかもしれない。ほんの手伝いの分際でなんですが彼女の子のお話も心待ちにしております(小声) (2020年11月11日 21時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作者ホームページ:https://twpf.jp/uranai_aoi
作成日時:2020年11月11日 17時