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「あの、アーシャさんって」
「……あぁ、支配人か」
わざわざ言い直した磯貝にレトカはここで彼女の名前は出さない方が良いのかと首を傾げた。否、ビーナスの支配人として名前は公表されているからそんなわけではない。
では何故スタッフはAの名を呼ばないのか。わざわざ客が知らない情報を与える必要はないからと聞かされている。
空気に釣られたレトカはAの呼び方を訂正する。接客をやってるだけあって空気は読めるらしい。
「えぇっと、支配人さん? は何で私のをここに……?」
「気紛れじゃない?」
「俺もそう思う」
「そんな事あります!?」
無いとは言い切れないのがあの支配人だ。一週間とは言え、ここにいる以上そんなもんだと納得して貰うしかない。
「……そうだな、折角だしレトカさんも遊んで来たらどうだ?」
「「え?」」
突然の磯貝の提案には名を出されたレトカは勿論、隣の渚までもが聞き返す。スタッフが遊ぶなんて……と咎める人は居ないが。
「いや、無理だろ、ウチの接客」
「あぁ……」
磯貝の端的な言葉で漸く渚も納得する。確かに幾らポルカでカードを囓っていたとは言え、いきなり来たばかりでゲームの進行は難しいだろう。オマケにビーナスは最大規模のカジノ。まずは雰囲気に慣れるところからでも良いと判断したのだ。
「因みにスタッフでも十万コイン稼げたら支配人に挑めるぞ」
勝てた人は居ないけどな、と付け加えた磯貝はレトカに元手となるコインを貸してやる。
「えっ、いいんですか?」
「あぁ。働いて返して貰うからな」
「うぅ……そうですよね……頑張ります……」
「取り敢えずはポーカーとかで地道に稼いで、スロット、ルーレットで一攫千金が常套手だな。渚、あと彼女に付いてやってくれ」
「あ、うん。ありがとう磯谷君」
見慣れないコインに目を輝かせるレトカを置いて磯貝も仕事に戻る。
「――支配人。言われた通り指示しましたよ」
『――えぇ、ありがとう』
「――吉と出るか凶と出るか」

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camellia(プロフ) - 葵さん» うぐふっ(謎の声)…………有難いお誘い誠に心苦しいけど今回は見送らせていただきます……バチクソに私事なんだけど50作目にこっち名義で新作出せるように諸々準備中なので、現時点で出来かねるのよ……一連が落ち着いたら参加も考えます(震) (11月12日 22時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - camelliaさん» やった〜〜。頑張った甲斐がある(まだ始まったばかり)。一人完成したら公開って形で順番に書かせて頂く予定なので、遅くなるかもしれませんが……! 何に渋ってるかわかんないけど決心付いたらお気軽にお声がけ下さいね笑 (11月12日 22時) (レス) id: f205b8954e (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - 好きです(唐突な告白) いや企画の時点でも相当好きでしたけど!!一気読みして心撃ち抜かれました本当に……。募集企画に興味湧いてきたかもしれない。ほんの手伝いの分際でなんですが彼女の子のお話も心待ちにしております(小声) (11月11日 21時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作者ホームページ:https://twpf.jp/uranai_aoi
作成日時:2020年11月11日 17時