【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ46
ソルカは唇を噛み締めた。
一歩も動けない中、ギリリと拳を握りしめる。
女はそんなソルカにさぞ愉快そうだ。
「あの子を助けたい?なら、チャンスをあげるわ。……ここに解毒剤を用意したの」
女はそう言って、空いた片手で懐から小瓶を取り出しチラつかせた。
紫色の怪しげな液体が瓶の中でゆらりと揺れる。
「でも、タダであげるわけにはいかないの。分かるわよね?」
女は目を細めて笑うと、次に懐からとあるものを取り出したのだ。
それは何かの装置のような円盤。言うなれば地雷のような形状をしたものだった。
「……なんだよそれ」
「これはとある実験をするための装置……。もうお分かりだと思うけど…。私は貴方達と同じ星から来た同族よ。私の任務はこの実験を地球にて遂行すること。……新薬の開発の為。とでも言っとこうかしら」
「……」
怪しげなその装置が、新薬の開発などと言う大義名分でないことは明白だった。
しかしソルカはモノ一つ言えない状況に、ただ女がいうことを聞くしかない。
「至って簡単。この装置を主要都市の至る所に設置してほしいの。」
「何のために?」
「だから言ってるじゃない。新薬の開発の為の実験だって。この実験が成功すれば、解毒剤の利益分を除いたってプラスになる程の名誉が貴方達のものになる。」
「……嘘だ。そんな名誉ある実験なら、ラビィを人質になんてしない。」
「あら。それもそうね。でも、やるかやらないかで貴方達の大切な妹が死ぬか生きるかが決まるのは明白なことよ」
女は実にあっけらかんと答えた。
選択の余地などない。と追い立てる様にクスクスと嘲笑してみせる。
「……そうね。じゃあこう言い換えましょう。この実験を成功させれば、貴方達の妹はもちろん……。死してなお罪人として墓を建てることすら許されない父の墓を、堂々と建てられるようになるわよ」
父親。その言葉にノルカとソルカの心臓が跳ねた。
息苦しさを感じる程動揺する二人に、女は満足げに笑をもらす。
「可哀想よね……貴方達の父親は死んでもまだ罪人だと罵られ、それはこれからもずっと続いてく。弔うための墓石すら建てられない始末……不憫よねぇ。」
「……や、やめろよ。」
「貴方達も故郷を追われ、もう二度と産まれたその地に戻る事が出来ない。ふふ。なんて可哀想なのかしら」
「やめろ!!それ以上言うな!!」
ソルカの膝は不安による震えでガクガクと泣いていた。
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story101(プロフ) - はい!ぼんさんの作品、正座待機でお待ちしております。 (2016年12月25日 22時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - story101さん» こんばんわ!お久しぶりです^^*更新停滞申し訳ございません(><)ふぉお!そう言って頂けると喜びの舞を披露しちゃいますよ!!←怖い有難うございます!これからもよろしくお願いします(。_。*) (2016年12月25日 22時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
story101(プロフ) - こんばんはまっくろワッサンです。私エンマ大王。特、にぼんさんの作品のエンマ大王の大ファンです。面白いのひと言に尽きるというか (2016年12月25日 21時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - ぼんさん» いえいえ、それほどでも(照)(((はい!もちろんです!応援してます!! (2016年10月29日 0時) (レス) id: a285e02c29 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» こんばんわ!おおっ!流石こたつさん^^*仕事が早いでウィス・:*+.(( °ω° ))/.:+読み返して下さってありがとうございますー!これからも頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2016年10月28日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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