【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ25
「何故です長！」
「国軍が我々に何の用か知らぬが、船の存在を知られてはならぬ。あれは儂らの最後の希望だ。儂が残り国軍様にお帰りいただけるよう話そう」
ざわざわとざわめく集落内で、ソルカは言い出せずにいた。
国軍の目的が、自分達かもしれない事を。
もしそうであれば、自分がここに残り国軍に連行されれば済むこと。
それを拒むのは、恐怖。
国軍に連行されればどうなるか…。そんな事は嫌でも理解出来た。
ふと、そんなソルカの手がきゅう、と握られる。
そちらを見やれば、ラビィが何も知らない瞳で自分を見上げていた。
今ここで自分が行動しなければ…。この人達は…。
ソルカは意を決して、長である老人の元へ歩み寄った。
「お爺さん」
「なんじゃ」
僕が、ここに残ります。
そう言おうとしたその時だった。ソルカ！！と自分を呼ぶノルカの声。
ハッとしてそちらに視線を向ければ、息を荒らげたノルカが立っていた。
「ノルカ…！」
「はっ、は…今すぐここから皆逃げろ」
息も絶え絶えに放ったノルカの言葉に、皆は目を丸くする。
どよめきが強くなった中、老人がノルカに駆け寄った。
「どうした？何があった？」
そう問われたノルカはぎゅっと拳を握りしめ、唇を噛み締める。
老人と視線を合わせる事が出来なかった。
そんなノルカに次に駆け寄ったのはソルカだった。
「……ノルカ！国軍は…？あいつらの目的は」
「…ソルカ。違ったんだ……あいつらの狙いは……」
妖兎族の皆だ。
ボソリと吐き出されたノルカの言葉に、周囲は目を見開き。時が止まったかのように身動きが出来ない。
「……爺さん。亡命要請しに行った奴らの連絡はもう来ねぇ」
「なっ、」
悔しそうに呟かれたその事実に、老人は全てを悟った。
ノルカからよろよろと数歩後退し、額に手を当て座り込む。
「……そうか。そういう事か」
「とにかく逃げてくれ！！奴らは今夜中にアンタらを殲滅する気だ！！あのクズ野郎がそうおめおめと踵を翻すはずがねぇんだよ！！」
「……」
「なぁ頼むよ爺さん！！今すぐ」
「……出来ん。あの船は皆で作り上げた最後の希望だ。例え命と引き換えにしても、守り抜かねばならない。」
「な、何言ってるっしょ！船なんて、また作りゃいいじゃねぇか！！ここで死んじまったら」
「ノルカ、ソルカ。頼みがある」
ノルカの言葉を遮ったのは、老人の芯の通った声だった。
【ノルソル過去編】善良な悪人達の話→←【ノルソル過去編】善良な悪人達の話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
story101(プロフ) - はい！ぼんさんの作品、正座待機でお待ちしております。 (2016年12月25日 22時) (
レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - story101さん» こんばんわ！お久しぶりです^^*更新停滞申し訳ございません(><)ふぉお！そう言って頂けると喜びの舞を披露しちゃいますよ！！←怖い有難うございます！これからもよろしくお願いします(｡_｡*) (2016年12月25日 22時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
story101(プロフ) - こんばんはまっくろワッサンです。私エンマ大王。特、にぼんさんの作品のエンマ大王の大ファンです。面白いのひと言に尽きるというか (2016年12月25日 21時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - ぼんさん» いえいえ、それほどでも(照)(((はい！もちろんです！応援してます！！ (2016年10月29日 0時) (レス) id: a285e02c29 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» こんばんわ！おおっ！流石こたつさん^^*仕事が早いでウィス･:*+.(( °ω° ))/.:+読み返して下さってありがとうございますー！これからも頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2016年10月28日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
