【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ17
「……それは、つまり」
ソルカが老人に問えば、老人は力強く頷く。
それが意味するもの明白だった。
「儂ら残された妖兎族は……地球への亡命を試みようと思うておる」
その言葉に、ノルカとソルカは驚愕した。
この絶望的状況下の中……彼らは決して希望を失ってはいなかったのだ。
「で、でも亡命だなんて…」
「フォフォッ!無謀だと思うだろう?だがしかし、生憎こんな耄碌になっても、培った技術というものは生きていてのぅ。つい先日だが、地球へ数名……妖兎の若者を送り込んだのだ。亡命要請の為にな」
「なっ、どうやって送り込んだんだよ爺さん!!地球とここの間には宇宙空間ってものが……」
「その空間を移動する小型船を作るのに、とても長い時間がかかってしまった。しかし、根気よく続けた成果は必ず儂らに未来をくれる」
そう言って老人はゆっくり立ち上がる。そしてノルカとソルカにチラリと視線を向け、ついて来い。と呟いた。
ノルカとソルカは目を見合わせた。
ヨタヨタと、子供と杖に支えられながらもしっかりと地を踏みしめる老人の背を追う。
しばらく歩いた先。そこには、継ぎ接ぎだらけのボロ切れで出来た巨大なテントがあった。
それは、他に立ち並ぶテントの数十倍は有るであろう大きさだ。
「お爺さん…。これは?」
「中を見れば分かる」
老人は得意げにそう言って中へ。
ノルカとソルカも恐る恐るその中へ入ってゆく。入ってすぐのことだった。
ノルカとソルカの表情が驚愕のそれに変わったのは。
「なっ……」
「こ、れ……」
二人の前に現れたのは、宇宙船。それそのものだった。
廃材を利用したのだろうか。お世辞にも上等とは言えない素材。だが、しっかりと作られたそれはとてつもない威圧感を放つ。
ノルカとソルカは本でしか見たことのない宇宙船というものに、ゴクリと生唾を飲み飲むばかりだ。
「何年、何十年、いや何百年……月都から排出された廃棄物を漁ったことか…。少しずつ、だが確実に。儂らはそれを実現していったのだよ」
「こ、これ。爺さんが……!?」
「儂だけではない。妖兎族の皆が作りあげた未来へ方舟だ。言っただろう?耄碌になっても、培った技術は生きている……とな」
老人は得意げな笑みを見せた後で、再び自分達が作りあげた宇宙船に視線を戻す。
「確かに、儂らこれまで沢山の犠牲を払ってきた。奴 隷として虐げられ死んでいったもの。劣悪な環境下どうする事も出来ず死んでいったもの」
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story101(プロフ) - はい!ぼんさんの作品、正座待機でお待ちしております。 (2016年12月25日 22時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - story101さん» こんばんわ!お久しぶりです^^*更新停滞申し訳ございません(><)ふぉお!そう言って頂けると喜びの舞を披露しちゃいますよ!!←怖い有難うございます!これからもよろしくお願いします(。_。*) (2016年12月25日 22時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
story101(プロフ) - こんばんはまっくろワッサンです。私エンマ大王。特、にぼんさんの作品のエンマ大王の大ファンです。面白いのひと言に尽きるというか (2016年12月25日 21時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - ぼんさん» いえいえ、それほどでも(照)(((はい!もちろんです!応援してます!! (2016年10月29日 0時) (レス) id: a285e02c29 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» こんばんわ!おおっ!流石こたつさん^^*仕事が早いでウィス・:*+.(( °ω° ))/.:+読み返して下さってありがとうございますー!これからも頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2016年10月28日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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