【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ2
「ご苦労だったな」
「へへっ、」
チャリンと商人の掌に置かれたのは、日銭相当ほどの金貨だった。
「あ、あのぅ。オキナ殿」
「何だ?」
「い、いえ!……あの子達を何故月都へ?気になっていましてねぇ」
「それは貴様に関係の無い事だ。分かったら今まで通りに働け」
「へ、へぇ!すいません!」
商人は逃げるように宮殿を後にした。そんな商人を目を細め見届けた後で宮殿内に踵を翻すのは…オキナ。
カツカツと靴音を軽快に鳴らし、たどり着いたのはツクヨミが鎮座する帝の間であった。
「ツクヨミ様。例の商人がヤシの息子達を月都入りさせました」
「そうか」
「それにしても、ツクヨミ様はつくづく恐ろしいお方だ。わざわざ薄汚い商人を使ってまでこんな事を」
「主はよく喋るの。オキナ」
帝の間。玉座にもたれたツクヨミが笑った。
その袖で口元を隠し、クスクスと似つかわしくない上品な笑い声を上げる。
そんなツクヨミにオキナもつられて笑った。
「そうじゃ。主の妻であるオウナにも、褒美を取らせぬとならぬな。何が良い?金の装飾品が良いか?それとも絹の羽衣が良いか?」
「いえ、我が妻にはどれも勿体のない。そのお言葉だけで充分です」
「フフッ謙虚よのぅ。それにしても、オウナの毒術は実に立派なものだ」
ツクヨミは、さらりと羽扇で自身を撫でるように扇いだ。
優れた毒術を持つ、オキナの妻オウナを使いゲッセンを毒殺したのも。
礼状を使い、ヤシに濡れ衣を着せオキナに連行させたのも。
処刑するが為に無実をヤシに自白させたのも。
そして、そんなヤシの最後を見せるため
商人を使いノルカとソルカを月都入りさせたのも……。
全てはツクヨミの差し金であった。
「妾はのぅ。乙女心を辱められ、実に深く傷ついた。故に手に入らぬものは、自身の手で消すまでよ……」
「はっ、ツクヨミ様を辱める輩など。許されるものでは御座いません」
「ついでと言っては何じゃが……。あの餓鬼め等も気に食わん。あの小憎たらしい雌とまるで同じ容姿ではないか。フフッ楽しみよのぅ。その端正な顔立ちが、絶望に満ちるのは」
「国の貴族たちも退屈していた所です。今日は丁度良い"宴"になりますぞ」
帝の間に不気味な含み笑いが響き渡る。
【ノルソル過去編】善良な悪人達の話→←【ノルソル過去編】善良な悪人達の話
63人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
story101(プロフ) - はい!ぼんさんの作品、正座待機でお待ちしております。 (2016年12月25日 22時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - story101さん» こんばんわ!お久しぶりです^^*更新停滞申し訳ございません(><)ふぉお!そう言って頂けると喜びの舞を披露しちゃいますよ!!←怖い有難うございます!これからもよろしくお願いします(。_。*) (2016年12月25日 22時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
story101(プロフ) - こんばんはまっくろワッサンです。私エンマ大王。特、にぼんさんの作品のエンマ大王の大ファンです。面白いのひと言に尽きるというか (2016年12月25日 21時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - ぼんさん» いえいえ、それほどでも(照)(((はい!もちろんです!応援してます!! (2016年10月29日 0時) (レス) id: a285e02c29 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» こんばんわ!おおっ!流石こたつさん^^*仕事が早いでウィス・:*+.(( °ω° ))/.:+読み返して下さってありがとうございますー!これからも頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2016年10月28日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ