春の一コマ その6 ページ10
「美術部の部室ってここ…だよね?」
私達がいるのは旧校舎三階の奥詰まりにある、古いかんじのする自主勉強室。
というか、旧校舎に入ってここに来るまで、誰ともすれ違わなかったんだよね。
こんな人気の少ない場所…何が待ち構えて…?
なんて、謎の創造を膨らませれる程度には雰囲気がある。
正直、ドアを開く前から聞こえてきている騒がしい…嬌声?歓声?ときどき…怒声…?
恐る恐るドアを開いてみる。
まず最初に目に入ったのは、本棚からあふれ出ているマンガの山。
その隙間に転がるゲーム機とセッティングされている大量のフィギュア。
そして、部屋の中央に置かれているテレビでゲームをしているのは…
「凛?!」
毎日のように見かけ、見慣れに見慣れた兄のような存在…凛だった。
「A?!な、なんでここに?!ってあああああ!!!アイカおまっ卑怯だぞ!!!!画面から目を離した隙に攻撃なんて!!」
「リンうるさーい。てか、勝ちは勝ちだろー?ホラジュース買ってきてよ。甘くないやつねー」
凛の隣で対戦をしていたらしき男子生徒がニヤニヤしながら言い放つ。
そんなことより!と大声で騒ぎながら、
「なんでAがこんなとこに来たんだ?!俺、Aに所属してる部活教えたっけ?!」
と、混乱しているらしい凛がまくしたてる。正直うるさい。
「いや、私達は『美術部がすごい』っていう噂を聞いて気になったから…ねえ?光くん。」
「え?!あ、うん。ボクたち部活見学に…来ました?」
え…?生徒会長…?と、光くんが呟いてる。
「あぁ、光くんコレは、一応生徒会長の凛。多分光くんの思っているようなかっこいい先輩じゃないよ。早いうちに見切り付けときなね。」
混乱している人に挟まれて、なんかもう私、逆に冷静になったみたい。
「まって?!A、俺の説明酷くない?!」
「そんなことより、そこの一年に部活説明したらどうですか?凛センパイ。」
「そうだよリンー。早く説明したら〜?」
「えっちょまって?!俺まだちょっと混乱が…」
部屋の隅でスマホをいじっていた人がヤジを飛ばすと、凛とゲームをしていた人もそれに便乗する。
見ている分にはおもしろいけど、説明はもうそろそろしてほしいかな。
「えーっとぉ?えー、この部活は…」
ガララ…
「失礼します。美術部の部室はこちらでよろしいでしょうか。」
ようやく始まった凛の説明を遮って入ってきたのは、毎日見かける人…
クラスメイトの峰岸くんだった。
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作者名:とうふけいじょし@めんつゆがけ | 作成日時:2019年6月9日 20時