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「オーダー、チーズインハンバーグ、甘い人参、コーンポタージュ、あと岸くん特製焼きたてのパン、です」
「ねーよ！！」
廉が淡々と告げたオーダーに、厨房から店長が怒号を飛ばす。
水曜の夜、ウィークデイど真ん中でも、廉のバイト先であるこの小さな居酒屋は、人が入る。
席数こそ少ないが、料理人である店長と、バイト数人で回してるため、仕事はそれなりにいそがしい。
とはいえ、夕飯時も過ぎ22時近くなると、そろそろのんびりとしてくる。
そんな日も、柱の影、微妙に死角になっている奥の席、一番厨房に近い、頑張って3人、できれば2人用のテーブルは、暗黙の了解で常連専用席となっていた。
ホール担当の廉は、今日も見知った顔が座るテーブルのオーダーを厨房に伝える。
「ねえ！もうさあ！ここ居酒屋！和食の居酒屋！百歩譲ってハンバーグは作れても、なんだよ最後！」
忙しく動いていた岸が、手を止めてうるさい動きでこちらを指して矢継ぎ早に叫ぶ。
「正しくは、岸くん特製焼きたて、ほかほかパン、です」
「だからねーから！」
相手がメニューも見ずに注文するので、廉はそれを忠実に繰り返しただけだ。
「俺に叫ばれても」
廉は思わず不満を零す。
「いやいやいや、お前わかってるじゃん。わかっててとってきてるじゃんそのオーダー」
「俺あの人に逆らえへん。からはよ作って、岸くん」
「俺はいいのかよ。俺の方があいつより年上だかんな、言っとくけど」
岸はやれやれと肩を竦めたあと、パンは無理！ライスで我慢しろって言っといて！といい、冷蔵庫をごそごそとしだす。
数え切れないほど繰り返してきたこのやりとり、なんやかんや、この人がこのメニュー外注文を断ってるのを、見たことがない。
廉は手書きの注文表を壁に貼り、かわりにグラスに生ビールをそそいでホールに出る。
「パンは無理やって」
はい、生、と渡しながら、スマホを見つめていた小柄な人物の頭部に話しかける。
「えー。そこが肝なのに」
廉の大学の先輩である岩橋は顔を上げて抗議した。
「いやいや、まあ、出てきたらびびるやん」
「岸くんは美味しいパンくらい作れるもん」
冗談なのか本気なのかわからないトーンの岩橋に曖昧に笑って、廉は仕事に戻る。
今頃岸が買い出しに出てる神宮寺に追加の材料を電話してるだろう。
この人たちの関係も、いつまで経っても不思議だと廉は思った。
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まな - 一気読みしてしまいました！！無理のない頻度での投稿、楽しみにしてますね！ (2020年4月14日 0時) (
レス) id: 9c457a3c27 (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - Nano.さん» ありがとうございます...！なるべくサクサクいけるよう頑張ります...！ (2020年3月17日 18時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
Nano.(プロフ) - とても楽しくみています。次の更新をお待ちしています！ (2020年3月16日 12時) (レス) id: 03ff967dd1 (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます！このシーンから初めに思いついて描き始めたので嬉しいです！ (2020年2月19日 14時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - ど、ドキドキしました。キスしちゃうかと思った。廉君にとって、血のつながりはないけど、誰よりも何よりも、きっと自分よりも大切な存在が、お姉さんなんですね。すごく切なくて、大切さがひしひしと伝わってきました。 (2020年2月17日 15時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はなこ | 作成日時：2020年2月13日 12時
