信じられない非日常。【騎士A】

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「っぶ、」

足を踏み入れた瞬間滑りされるがままに顔面を打ち、気の抜けた声を出す。

なぜこんなに床が滑りやすいのか。

座り込んだ状態で考え出す。

...そうだ。

昨日、掃除が面倒臭くなって泡を床にかけるだけかけて中断したんだ。

すっかり忘れていた。

壁に手を当て、立ち上がる。

シャワーの蛇口をひねり、水を出す。

水が温かくなってきたところで台からシャワーを取り、床に当てる。

排水口に向かって泡と水が混ざって流れていった。

体と頭をひとしきり洗って、湯船に浸かる。

ちゃぽん、と効果音のような音がなり、ゆっくりと腰を下ろす。

スマホが無く、風呂に集中するしか無い空間。

視線を前から上に持ち上げ、目を瞑る。

僕...他の人とは何か違うのかな。

さっきの配信の余韻に浸る。

他のリスナーさんも同じ事を思っているのは想定内。

自分だけ特別だと感じている訳ではない。

ただ単に、純粋に思考しているだけ。

あれやこれやと考えている内に頭がぼーっとしてきて、慌てて体を拭き外に出る。

少し暑くなってきた程度で、風呂の中と比べると外の方が圧倒的に涼しかった。

服を着て、腕を捲くる。

洗面所に居るならついで、と思い歯ブラシを手に取って歯磨き粉を付ける。

口がスッキリするミントの味、ではなく甘い味のするイチゴの味。

ミントの味はどうも僕の口には合わなくて、1回使ったきりだった。

歯を磨いた後は速攻で自分の部屋に行き、ベッドの中に入る。

いつも邪魔でどけてしまうぬいぐるみ達を寄せ集め、握りしめる。

うまく働かない頭を動かして、眠るまでの時間を過ごす。

寂しい。

悲しい。

辛い。

苦しい。

気分が暗くなっていく。

息がしづらくなって寝返りを打つ。

...寝れない。

水でも飲んで気分転換しよう。

半寝している体を無理矢理起こして、壁にもたれかかりながらリビングまで足を運んだ。

電気が付けっぱなしで眩しかった。

テーブルの上に置いてあった水を飲み干して、シンクに入れる。

外を見ようと窓を開け空を見上げる。

心地良い風が吹いてきて、髪が顔にかかる。

顎ら辺に切り揃えた髪をくしっと撫で、窓を少しだけ閉める。

カーテンが風で動いている。

まだ何かが足りない気がして、パソコンを開く。

YouTubeで騎士Aのチャンネルをクリックして、マイクラゲーム実況の動画を視聴する。

元気をもらえた気がして。

部屋に戻り、眠りについた。

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