頑固者が2人おりまして

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運転席の窓が閉まる。



岩さんは、マンションに入っていくAにひらひらと手を振って、Aがマンションに入ったのを確認してからハザードランプを消した。




岩「言いたいことがあるなら聞くよ」




岩さんは、一瞬だけちらっと俺の方を見てそう言った。




壱「岩さん、恋人ごっこ、本気で言うてるんですか」



岩「うん」



壱「……なんで、ですか？」




そう、気がついたら口にしていて、運転する岩さんの後頭部を見つめることになった。



別に、なんで、と問うつもりはなかったのに。




岩「なんで、とか、聞いちゃうんだ笑」




そんなの、考えたら、わかることじゃんね。




そう俺の方を見ずに、岩さんは、そう言った。



俺は、岩さんのその言葉に、ぐっと唇を噛んで、太腿の上で、拳を握りしめた。




岩「俺から言わせれば、横取りは、壱馬、なんだよね」




壱「……横取りもなにも」




岩「Aは、モノじゃないから、横取りって言ったら、怒られそうだなあ」




そう言って、岩さんは少し、せつなげに微笑んだ。



悪いこと、してへんのに、悪いことしてる、気分になる。



悪いこと、してへんのに、な。




岩「あ、壱馬ここだっけ」



壱「はい、ここです、ありがとうございました」




岩さんに降ろしてもらって、頭を下げると、岩さんはいつもどおり、笑った。



そして。



ごめんな、大人気なくて。




と、俺にそう言ったんだ。

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