049 偽物 ページ5
目を開けると、そこは本丸ではなかった
なぜ私はここにいるのだろう
――確か、私は白光たちと一緒に敵を倒して、本丸に帰ろうとしたらユージオ様に声を掛けられて……
そこから先の記憶がはっきりとしない
顔を上げて周りを見渡すと、私は部屋の中心で、椅子に腰かけているようだ
「ここは……?」
純粋な疑問を口に出してみるが、これに答える声はない
溜息を吐き、椅子から立ち上がって部屋を軽く調べる
部屋の広さは、横5メル、奥行き6メルほどで、1人でここを使えと言われたら、少し寂しいと感じるかもしれない
部屋の奥には、入り口から見て左側に箪笥、右側には机があり、机の上で何かのお香が焚かれている
しかし、箪笥には埃が乗り使われている気配はないし、どれだけ鼻から空気を吸い込んでも何の香りもしない
もっと情報を集めようと、閉まっている障子に足を向けた時だった
目の前の障子が音もなく開かれた
入ってきたのは、
「ユージオ様っ!」
ユージオ様は先刻――私がどのくらい眠っていたのかは分からないが――私に見せような笑顔を再び見せた
『A、調子はどう?』
「……?」
だが、何かが違う
何だか不自然で、私の知っているユージオ様とはどこか違う
「……私は平気です。それよりも、私はユージオ様の方が心配です」
私がそういうと、ユージオ様は苦笑を浮かべ、口を開いた
『……実は、最近体調が安定しなくて』
……違う
ユージオ様は、体調を崩しそうな時、崩している時、薔薇の香りがする霊気が少し熱を帯びる
しかし、私の目の前にいる彼からは、霊気の熱も、薔薇の香りすらも感じない
つまり、このユージオ様は偽物だ
「そうだったんですね……早く治ると良いですね」
私は思ったことを表に出さないように、眉をハの字にして、偽物の目を見つめる
その瞳の奥にいるこいつの正体を探るように
『うん。ありがとう』
幸い、偽物は私が秘密に気づいたとは分からないようで、張り付けた笑顔を見せている
『あ、そうだ。君にこれをあげたくて
手を出してくれるかい』
素直に手を出すと、その上に置かれたのは、硝子でできた薔薇の花だ
丁度掌に収まる大きさ
「これは?」
『ある人から預かったんだ。君に渡してほしいって』
ある人とは誰か、とまでは聞かず、ありがとうございますと微笑む
偽物も微笑んで部屋から出ていく
気配が感じられなくなってから、息を吐いて、途中から思っていたことを呟く
「偽物なんて、長義さんみたい」
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白(あきら)(プロフ) - 銀狼さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年10月13日 23時) (
レス) id: 46e374d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
銀狼(プロフ) - 続編おめでとうございます！いつもいつも楽しみにさせて頂いております！これからも更新頑張ってください！ (2019年10月13日 10時) (レス) id: c5721a90b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白（あきら） | 作成日時：2019年10月13日 2時
