隠さなくても、いーですか？ ＊不器用男子高校生×爽やか系非常勤教師 〈BL〉

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夢を見た。


中学の入学式の日、

保護者でもなんでもないのに

なぜか浩司も参列してて。


頑張ったなーA、

って頭を撫でられた。


ほんとは嬉しかったけど、

ずっと浩司にそうされていたかったけど、

恥ずかしさが勝って。


すぐにその手を払いのけてしまった。



『夕飯、食べてくだろ？』


俺がそう訪ねると浩司は、



『A、ごめん。

俺、行かなくちゃいけないんだ』


そう言って俺に背を向けた。



『は、どこに？』


『新しい家。

俺、一人暮らしすんの。

学校に近いアパート見つかったから』


浩司が

どこかの学校で教師をすることは知ってた。


でも、引っ越すなんて聞いてない。


俺から遠い場所に行くなんて

そんなの、一言も聞いてない。



『なんだよそれ。』


なんで俺に黙ってそんなこと。



『黙っててごめん。』


謝られたら、

俺ばっかり浩司と離れたくないみたいで、

どうしようもなく自分がカッコ悪くて、

寂しいとか悲しいとか

そんな気持ちを素直に伝えられなくなって。



『別に俺には関係ねーし。

クビにされねーよーに頑張れよな』


なんて言って

涙をこらえて別れるしかなかった。



『絶対帰ってくるから』


その言葉が、気休めにしかならなかったこと、

浩司は分かっているのだろうか。



『じゃあね、A』


その言葉が、どれだけ俺の胸を痛くしたか、

浩司は知らないだろう。



なにも伝えられなかった後悔を抱えて

中学3年間を過ごした。


浩司が帰ってくると聞いて、

今度は後悔しないようにしようと

今度はきちんと想いを伝えようと、

そう思ったのに。


社会人になった浩司は、

俺の知ってる浩司よりも

キラキラが増していて。


世話好きで優しくて

すぐ俺のことからかってくるくせに

実は繊細で、

そんな俺の好きだった浩司は

もういないような気がして。


だけど、

俺に接する浩司は、

俺が好きな浩司のままで。


それが嬉しかった。





「ん、」


体にふわりと重みを感じて

重いまぶたを開ける。



「あ、ごめん、起こしちゃった」


重みの正体は

浩司がかけたブランケットだった。



「夢、みた」


「こんな短時間で？」


「中学入学式の夢

浩司がいなくなったときの夢」


「絶対帰るって言ったじゃん」


「言ったけど、」


それでも、俺は。



「ただいま、A」


そう言って俺の首に腕を回す浩司に



「・・・おかえり」


そう言って俺は顔をうずめた。




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