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『A……?』
顔を覗き込まれ、ようやく我に帰る。眉間にシワを寄せるまたちゃんに「なあに?」と口角を上げて見せた。
『帰ってからずっとボーッとしてるっスけど、なにかあったんスか?』
『ううん。何もないよ』
『……あ、甘味屋さんに寄り忘れちゃったからかな?』
『甘い物が無性に食べたくて』
ヘラヘラ、という擬容語が今の私の顔に一番似合うだろう。それなら良い茶菓子があると、またちゃんは何処かへ駆けて行く。
その後ろ姿を見送り、私は自室までの道をゆっくりと辿った。重たくて足を引きずるように歩いて、いつもより何倍も時間をかけながらもようやく到着する。
倒れこむくらいの勢いで畳の上へしゃがんでは膝を抱え込む。そこに顔を埋め、深く呼吸をした。
胸が苦しいのは、気のせいだろうか。
薬を飲もうと手に取るも、またちゃんが部屋に入ってきてしまう。薬を飲んでいるところを見られてはまた心配を掛けさせてしまうため、「どうしたんスか?」と聞かれたが「何でもない」と首を横に振るった。
彼女が持ってきてくれた最中を無理やり口の中へ詰めて喉奥へ押し込んだ。
味なんて感じる訳もなく、「甘くて美味しいね」
……なんて在り来たりな感想を述べる。
喉に張り付く最中は鬱陶しく、お茶で剥がそうと一気に湯呑みを傾けた。
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まい - 999本の薔薇は「何度生まれ変わってもあなたを愛す」ですね。感動しました。 (2020年5月12日 20時) (レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 完結おめでとうございます。まさか、「おかえり、愛おしい人よ」シリーズと繋がっていたのだとは知りませんでした。そして感動し、鳥肌が立ちました。素晴らしい作品です! (2019年11月12日 18時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒奈(プロフ) - すごい感動しました!涙が止まらなかったです!本当におもしろくて、最高でした! (2019年2月9日 22時) (レス) id: 128bb1ac1a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - モモさん» 閲覧とコメントをどうもありがとうございます^^ 沖田もいいキャラですけど高杉も捨てがたいですよね〜〜〜!! そう言ってもらえてとても嬉しいです!! ありがとうございました( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 今回の作品もとても面白かったです!思わず涙ぐんでしまいました(笑)サドリーマンも好きだけど、特に高杉さんの作品が大好きです!私もどちらかと言うと高杉好きなのでwとても素晴らしい作品をありがとうございました!!! (2018年3月18日 20時) (レス) id: a467930736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年8月24日 11時