没落した元王家御抱え武器工房の跡取りは世界の命運を握っているようです (ページ4)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:2,490 hit

ep.4 Prediction ページ4

「…笑えない冗談だな。」

「冗談じゃない、ホントだよ。」

「じゃあ何でそんなに平然としてられるんだよ。」

「私、死ぬつもりはないから。」

「ほら、やっぱり冗談じゃないか。」

「違う！ホントの事なの！あーもう、話がややこしくなるからAはちょっと黙ってて！」

逆ギレされてしまった。やはり女心は難しい…のか？

「コホン、じゃあ説明するね。トム爺知ってるでしょ？私の師匠の。」

「ああ。トム爺にはいつもお世話になってるからな。」

トム爺は俺たちが小さい頃にこの街にやって来た魔術士だ。魔術を使って街の皆の困りごとを解決したり、よく効く薬を売ってくれたりと街の皆から頼りにされている。だから街の皆は親しみを込めて「トム爺」と呼んでいる。

「トム爺って占いが専門なの。凄いんだよ、ほとんど当たるんだから。」

エルの顔が少し翳(かげ)る。

「それでね…1年くらい前かな、トム爺が私に言ったの、来年の7回目の満月の日に私の命は失われる、って。」

「そうか、明後日は《文(ふみ)ノ祭》だから…」

《文ノ祭》、この国で毎月満月の日に行われる《暦(こよみ)ノ祭》の中でも最も重要とされる祭事だ。俺は魔術には疎いが、確か月の魔力が最も強まる日、とかだった気がする。

「うん、だけどね、トム爺が死ななくて済む方法を見つけてくれたの。…まぁ、体は諦めなきゃだけど。」

「…最後の言葉が凄い気になるんだが。」

「まあまあ、ここから先はトム爺に聞いて。私の家で待ってるから。」

「あぁ、よく分からんが分かった。身支度をするからちょっと待っててくれ。…あと、いい加減俺のベッドから降りてくれないか？」

「あっ、ご、ごめん。」

顔を真っ赤にしてベッドから降りる少女は元気そうで、明後日死ぬようにはとても見えない。

「無理…してるのかもな。」

そんな呟きが口からこぼれた。

「ん、なんか言った？」

「いや、何でもない。」

まあどのような方法であれエルが助かるならそれでいい。

「じゃあ、〈アヴァロン・クラフト〉で待ってるから。」

「ああ、すぐ行く。」

って言っても、階段を下りるだけだけどな。そう心のなかで付け加えて、1階の工房へ向かうエルを見送った。