279.また一人魅了される。 ページ40
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「俺の名前を…知っていたんだな…。」
「李牧さんに聞かされたので…。」
「李牧殿に……そうか」
名前を知っていた事に嬉しそうだった顔が、李牧さんと名前を口に出した途端に不機嫌な表情へと変わった。
「あの、私に何か用事ですか?」
「用がなければ来てはいけないのか?わざわざ我が陣営から出向いてやったのに」
「ですから、何か用事があるんですよね?」
「お前の顔が見たかっただけ――」
「え…私の顔…?」
「勘違いするな。李牧殿に用があったついでだ」
「そうですか…李牧さんなら天幕にいましたけど」
私に用がないなら、気を使う必要もない。今は、明日にも始まる戦の準備をしなければならないのだから。
楚軍の兵に成り済ました私を秦軍へと送り帰してやる、と項翼さん達が約束してくれた。反逆行為に楚軍を裏切ることになると首を振る私に、お前だから手助けするんだ、一人でも多く民を助けてやれと言ってくれた。
一度戻って自分の武器を、と思っていた時に思わぬ先客。
「あの、いつまでここに?」
視線を感じて振り向けば、鳳明さんは直ぐ私の後ろにいた。無言のままで私の手にした弓をじっと見つめている。
「お前、何をしようとしてる?女のお前に武器は必要ないはずだ」
「それは…、」
「まさか、間者か!?非力なお前では戦えずとも、その容姿で男を手玉にする事は出来るだろう。李牧殿に近づいたのもその為だとしたら――っ!?」
「し、静かにして下さい!」
気づいたら行動していた。背伸びをし、鳳明さんの口を手で塞ぐ。総大将に失礼な事をしているのはわかっているが、こうでもしない限り大事になったら困る。
「お願いですから、騒がないで下さい…。」
至近距離で目を見つめ、もう一度お願いですからと口にする私に、当の鳳明さんの顔が赤くなるのがわかった。口を塞いでいる私の手を退かし、鳳明さんはその手に自分の手を重ねる。
「お前に見つめられると変な気分になる…。この感じた事のない痛みはなんだ?それでいて嬉しいような、もっと俺に触れて欲しいような…。」
恍惚と言う表現があっているのか分からないけど、鳳明さんが私を見つめる目は熱を帯びていて、今回はこの魅了の力に助けられたみたいだ。
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S - 初コメ失礼します!キングダムにハマって昨日この小説を一から読んだんですがほんとに号泣で最高です!これからもがんばってください (3月31日 13時) (レス) @page50 id: 458c8fefa1 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 綿菓子さん» コメントありがとうございます。確かに、自分でも早いと思ってます笑。引き続き読んでいただけたら、嬉しいです。ありがとうございますね。 (2020年6月12日 19時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
綿菓子 - 最近は更新スピードがとても速いので嬉しいです!唯一無二の花嫁。7も必ず読みます♪無理せず更新頑張ってください(^^) (2020年6月11日 19時) (レス) id: 80159fc2f2 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 海さん» ありがとうございます。私も、読者様がこの作品を読んでくれることと、コメントをもらえることが原動力になってます。更新頑張ります! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ゆうあさん» はい、宜しくお願いします!こちらこそ読んでいただき、ありがとうございます。頑張りますね! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年12月30日 16時