258.口実。 ページ19
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「ほんと、翼の手の早さには呆れる。無事だったからよかったものの、特に何かされた訳じゃないみたいで安心した」
「私は大丈夫ですけど…項翼さんは大丈夫でしょうか？」
「気にするな。今頃、臨武君にたっぷりお灸を据えられていることだろう」
不機嫌極まりないといった表情の白麗さんは、苛立ったように的にした木に矢を放った。
「あの白麗さん、私にも弓の扱い教えてもらってもいいですか？」
「お前も弓専門？」
「あ、はい。白麗さん凄く有名な方だったんですね。私知らなくてすいません」
「気にするな。今回で知ってくれた訳だし、それに中華三位で俺は終わるつもりはない。もっと上を目指して、いつかは頂点に立つ。その時は俺の傍らにはお前が、」
「白麗さん？」
「な、なんでもないから」
私の視線に気づいた白麗さんは、照れ臭そうに顔を背けるとその恥ずかしさを紛らす為に、乱暴に弓を放つ。それでも的の中心は外さない。
「一度射ってみな」
渡された弓を手に持ち、狙いを定める。暫く鍛練から離れていたからか、木に刺さったものの正直誉められたものではない。窮地に陥った時だけ発動される力。普段の私の実力では、教えを乞うのも恥ずかしいレベル。
「何か言ってくれると…、」
「一言で言えば下手」
「ですよね…。」
「でも、だからこそ改善の余地もある。短い間だけど学べるものは俺から学んでいくといい。先ずは、ほらしっかり的との距離を計る。体の軸を合わせて、指先はこう」
手取り足取りとは言ったもので、言葉だけじゃなく触れて教えてくれる白麗さん。後ろから同じ弓を持つ体勢に、抱き締められている状態。ピタリと寄り添った体から伝わる熱、耳横で聞こえる声。
集中しようと思っても、集中できない。
「A、今何考えてる？」
「わ、私は…その……的に当てることだけを、」
「見栄すいた嘘。だってお前の顔も耳も真っ赤」
「それは白麗さんが、」
「俺が何？はっきり言わないとわかんない」
意地悪な質問に「白麗さんカラかわないで下さい」と言えば、ゴメンと白麗さんは笑った。
「今度は集中して。しっかり的を見る」
「あ、はい」
「……指南なんて俺にとっては願ってもないことだけど。Aを独り占め出来るし、堂々と触れる口実にもなるから」
白麗さんの言葉に、やっぱり集中なんて出来そうにない。
259.譲る気など毛頭もない。 白麗side→←257.運命。
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S - 初コメ失礼します！キングダムにハマって昨日この小説を一から読んだんですがほんとに号泣で最高です！これからもがんばってください (3月31日 13時) (
レス) @page50 id: 458c8fefa1 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 綿菓子さん» コメントありがとうございます。確かに、自分でも早いと思ってます笑。引き続き読んでいただけたら、嬉しいです。ありがとうございますね。 (2020年6月12日 19時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
綿菓子 - 最近は更新スピードがとても速いので嬉しいです！唯一無二の花嫁。７も必ず読みます♪無理せず更新頑張ってください(^^) (2020年6月11日 19時) (レス) id: 80159fc2f2 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 海さん» ありがとうございます。私も、読者様がこの作品を読んでくれることと、コメントをもらえることが原動力になってます。更新頑張ります！ (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ゆうあさん» はい、宜しくお願いします！こちらこそ読んでいただき、ありがとうございます。頑張りますね！ (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2019年12月30日 16時
