唯一無二の貴方。2【キングダム】

愛し愛されること。1 王騎 （サラ様リク） ページ36

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「A久しぶりですね。元気にしていましたか？」

「王騎様！」


私の姿を見つけたAは走り寄ってきて、その勢いのまま抱きついてきた。小柄な彼女を抱き上げ、同じ目線でニッコリ微笑むとAは顔を赤くして、目を逸らしてしまう。


「積極的かと思えば、目を合わしただけで恥じらう。どちらが貴女の本性なのか、私はそれが知りたい」

「カラかわないで下さい…。」


私の肩口に顔を埋めてしまったAは、「王騎様」と名を呼んではぎゅっと抱きしめる力を強くして、離れたくない様子。

それは私も同じで、自分を慕ってくれるAが可愛くて仕方ない。親子以上年の離れた彼女に、抱く思いはただの情だけではない。そこにある思いを口に出してはいけない。

私では、Aを幸せにはできないから…。


「王騎様、今日はゆっくりできるのですか？」

「そうですねェ。数日後にはまた戦に出向かねばなりませんが。隠居目前にして、王は私をよく働かせてくれますので」

「ふふっ、でも王騎様の表情とても楽しそう」

「楽しい…ですか。そうかもしれません。若き王がどのように秦国を導くのか、その行く末がもしかしたら楽しいと感じるのかもしれないですねェ。人の成長を見届けることに。もちろん、Aの成長も私の楽しみの一つですよ」

「私は……楽しみではありません。この先の未来に、王騎様の側にいられないなら…、」


顔を上げたAの瞳には涙。ゆらゆらと揺れて、一瞬でも触れたら溢れてしまいそうで。その瞳に映る私は、酷く歪んで見えるに違いない。貴女に抱く思いと同じように、自分を偽って遠ざけようと、また心にもない嘘を吐く言葉を探している。


「先程、貴女の父上から話を聞きました。婚礼の儀が決まったと。相手は貴族の出で家柄も人柄も良い人だと。喜んでおられましたよ。私もここに来るのは、もう控えた方がいいですね…。」

「王騎様は…私が幸せになれると思いますか？好いてもいない殿方と一緒になっても、幸せになれると…っ」

「貴女はまだ若い。いずれその決断が正しかったと思える時が来るやも知れません」

「そんな日は永遠に来ません…！私は自分の心に嘘はつけません！王騎様の側にいられないなら…っ…幸せになどなれるわけがないんです…。」


堪えていたAの涙が頬を伝い、私の肩口を濡らす。

気持ちを偽る事はどうにでもできると思っていたのに、揺らぐ思いを止めることは誰にもできない。

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